第31話

文字数 1,167文字

「諸君、そこまでにしたまえ。」

私と炎の青年との戦闘が始まろうとしている、その時だった。

厳かな雰囲気を纏った白髭の老人が。
それを護るように囲んでいる屈強な男達が。
戦闘員と思われる魔法使い達が。
全部で100人以上は居るだろうか。

私達を取り囲んでいた。

「……どちら様かしら?」
「どうもありがとう。赤いツインテールのお嬢さん。心から礼を言うよ。」
厳かな雰囲気を纏った老人が言う。
どうやら、この集団のリーダーのようだ。

「我々は、ケルベロスに非常に難儀していた。様々な方法を用いて、逃げ隠れしなければならないほどな。」
しかし、と厳かな老人は続ける。
「君達が討ち取ってくれたのだろう?ケルベロスの幹部を2人も。心から、感謝する。」

「まあ、賞金首に登録されてるからね。あ、でも氷の魔女はまだ生きてるわよ、そこに。」
厳かな老人は、隻腕の魔女を一瞥する。
「なら、そやつを我々に引き渡してもらおう。こちらで処分する。もちろん、賞金首の報酬はこちらで用意させてもらう。」

「なあ、おい?俺の事忘れてねえか?」

ボウッ!!

灼熱が、厳かな老人に襲いかかった。
しかし、
「魔法反射フィールド展開装置……!」
「ボルグ君。久しぶりじゃな。」
炎の青年が放った爆炎は、老人とその取り巻きの周りに展開されているフィールドにより、全てかき消されてしまった。

「この装置は簡易型ではない。1時間は効果が持つだろう。」
そう言って厳か老人なは、自身の後ろにある大きめの箱を指さす。

「1時間もあれば、君達全員を殺すのは容易い。なにせ……」
ジャキッ。

老人の取り巻き達が、金属の塊、銃を取り出していた。

「あ?なんだ、その金属は??」

「赤いツインテールのお嬢さん。そして、緑髪のお嬢さん。その氷の魔女を置いて、立ち去りなさい。このマナランドを救った英雄を、傷付けたくない。」

マナランド。
その単語が聞こえたのだろうか。
氷の魔女が目を開ける。

「ぐ、うう……!!お前、は……!!」
氷の魔女は、血走った目を隠そうとしない。
その目は、厳かな老人に向けられている。

「久しぶりじゃな。エシリア君。魔法管理局で、氷漬けにされた時以来かな?」
「パパと、ママの、仇……!!」
氷の魔女は立ち上がろうとしたのだろうが、バランスを崩して倒れてしまう。
……片腕がないから、かしら?

相当な痛みもあるだろうが、そんなものはどうでもいいとばかりに、氷の魔女は老人を睨みつけている。

「少しでいいから、事情を教えてくれないかしら?この娘を差し出していいものか、現状、判断出来ないわね。」
「自分の立場が分かってないようだね。」
嫌でも銃に目が行く。
私に銃はほとんど効かないが、それでも無事というわけではない。

それがこれほど大量に、こちらに向けられている。

「氷の魔女エリシアを、そやつを置いて立ち去れ。これは命令だ。逆らうなら容赦はしない。」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み