第12話
文字数 1,655文字
冒険者ギルドにて遅めの昼食を済ませた私達は、冒険者ギルドから少し離れたところにある街道を歩いていた。
この先に私の家があるため、そこに移動中である。
「ねえ、リブ?あれは何かしら?」
「あれはカジノね。冒険者ギルドにそこそこ近いから、多分依頼終わりの冒険者をターゲットにしてるんだと思うわ。」
「あれが、噂のカジノ……!」
ローレルは中央都市セントラルに来てからというもの、様々なものに興味津々だった。
特に娯楽関係の店に目がないようだ。
「奴隷バザールはね、衣食住はそれなりに充実してるけど、娯楽系のお店って殆どなかったのよ。たまーに奴隷同士を戦わせる見世物があるくらいね。」
だそうだ。
「カジノ、実はとても興味があるのよね!あれ、上手くやればお金が何十倍にもなるんでしょ?」
「そんな上手くいくわけないから、やめときなさい。」
ローレルは通り過ぎていくカジノを名残惜しそうに目で追っていた。。
「っていうか、あんた自分の宿は?まさか、私の家まで着いてくるつもりじゃないでしょうね?」
「え、そのつもりだったけど……。泊めてくれるでしょ?私達、友達なんだし!」
友達……!!
いや、またこのパターンか。
友達なら仕方がない。そう思ってしまえる自分に、流石に嫌気が指してきた。
「2、3日だけなら泊めてあげるわ。それ以降は自分の宿を自分で探すのよ?あんたお金だけは沢山持ってるんだから、それで生活はできるでしょ?」
「まあ仕方ないわね。このお金は出来るだけ節約したいのだけど、それで手を打ちましょう。」
上から目線の物言いにイラッとはしたが、それを言ったところで仕方がない。
この女は、こういう奴なのだ。
やがて私の家にたどり着く。
セントラルの中心地から外れに外れた、賑やかな街並みの影も殆ど残っていないような、そんな寂れた空間だった。
そこに小さな一軒家がある。
「付いたわよ。ここが私の家。」
「え、小さっ!しかもなんかちょっとボロいし……。」
「文句があるなら入らなくていいわよ。」
「ウソウソ!冗談よ!素敵なお家ね!お邪魔します!」
この女ホント……。
我が家の中に入る。
「帰ってくるのはなんだか久しぶりね。」
「え?何も無いんだけど?お布団は?机は?椅子は?」
畳敷きの狭い空間に、荷物を置いていく。
「ちょっとリブ??なんで何もないの??これ本当に貴方の家??どこかに家具くらいはあるのよね??」
「無いわよ家具なんて。必要ないもの。」
「はぁ〜??」
ローレルは愕然としていた。
「滅茶苦茶な事をしない限り、好きにくつろいでくれていいわよ。ここがキッチンで、厠はあっちね。」
「えぇ……。」
未だに固まっているローレルを無視して、私は大きめのバケツを取り出す。
「それバケツ?何に使うの?」
「私の寝床よ。」
「……ん??言ってる意味が分からないわ。」
私はキッチンでバケツを水洗いし、タオルを使って水を拭っていく。
「言葉の通りよ。私はこれの中で寝るの。」
「……んんん???」
ローレルは心底理解出来ないといった表情でこちらを見ていた。
「だからね、私は溶けてるでしょ?」
「そう言ってたわね。」
「だから、魔法を使って身体を維持してる。でもそれをずっとしてると凄く疲れるのよね。だから、休む時はこうやって、」
私はバケツの中に足を入れ、足先から徐々に魔法を解いて行く。
「全身をギリギリまで溶かして眠るのよ。」
喋れるように、バケツから頭だけを出しながら説明する。
「シュ、シュール過ぎる絵面だわ。というか、もう寝るの?」
「こっちは長旅から帰ってきたばかりで疲れてるのよ。しばらくは起こさないでね。」
欠伸をしながら答える。
「えっと、私はどうやって寝たら……?」
「何か掛け布団とかが欲しいなら買ってきたら?まだ夕方くらいだし、お店なら開いてると思うわ。」
「なんか、思ってたのと違う。」
「それじゃ、おやすみぃ。」
何やらローレルが騒いでいたが、頭も溶かしてしまったのでもはや何も聞こえない。
全身の緊張が解かれたため、疲れがどっと押し寄せて来る。
私はじんわりと襲い来る眠気に、逆らう事はしなかった。
この先に私の家があるため、そこに移動中である。
「ねえ、リブ?あれは何かしら?」
「あれはカジノね。冒険者ギルドにそこそこ近いから、多分依頼終わりの冒険者をターゲットにしてるんだと思うわ。」
「あれが、噂のカジノ……!」
ローレルは中央都市セントラルに来てからというもの、様々なものに興味津々だった。
特に娯楽関係の店に目がないようだ。
「奴隷バザールはね、衣食住はそれなりに充実してるけど、娯楽系のお店って殆どなかったのよ。たまーに奴隷同士を戦わせる見世物があるくらいね。」
だそうだ。
「カジノ、実はとても興味があるのよね!あれ、上手くやればお金が何十倍にもなるんでしょ?」
「そんな上手くいくわけないから、やめときなさい。」
ローレルは通り過ぎていくカジノを名残惜しそうに目で追っていた。。
「っていうか、あんた自分の宿は?まさか、私の家まで着いてくるつもりじゃないでしょうね?」
「え、そのつもりだったけど……。泊めてくれるでしょ?私達、友達なんだし!」
友達……!!
いや、またこのパターンか。
友達なら仕方がない。そう思ってしまえる自分に、流石に嫌気が指してきた。
「2、3日だけなら泊めてあげるわ。それ以降は自分の宿を自分で探すのよ?あんたお金だけは沢山持ってるんだから、それで生活はできるでしょ?」
「まあ仕方ないわね。このお金は出来るだけ節約したいのだけど、それで手を打ちましょう。」
上から目線の物言いにイラッとはしたが、それを言ったところで仕方がない。
この女は、こういう奴なのだ。
やがて私の家にたどり着く。
セントラルの中心地から外れに外れた、賑やかな街並みの影も殆ど残っていないような、そんな寂れた空間だった。
そこに小さな一軒家がある。
「付いたわよ。ここが私の家。」
「え、小さっ!しかもなんかちょっとボロいし……。」
「文句があるなら入らなくていいわよ。」
「ウソウソ!冗談よ!素敵なお家ね!お邪魔します!」
この女ホント……。
我が家の中に入る。
「帰ってくるのはなんだか久しぶりね。」
「え?何も無いんだけど?お布団は?机は?椅子は?」
畳敷きの狭い空間に、荷物を置いていく。
「ちょっとリブ??なんで何もないの??これ本当に貴方の家??どこかに家具くらいはあるのよね??」
「無いわよ家具なんて。必要ないもの。」
「はぁ〜??」
ローレルは愕然としていた。
「滅茶苦茶な事をしない限り、好きにくつろいでくれていいわよ。ここがキッチンで、厠はあっちね。」
「えぇ……。」
未だに固まっているローレルを無視して、私は大きめのバケツを取り出す。
「それバケツ?何に使うの?」
「私の寝床よ。」
「……ん??言ってる意味が分からないわ。」
私はキッチンでバケツを水洗いし、タオルを使って水を拭っていく。
「言葉の通りよ。私はこれの中で寝るの。」
「……んんん???」
ローレルは心底理解出来ないといった表情でこちらを見ていた。
「だからね、私は溶けてるでしょ?」
「そう言ってたわね。」
「だから、魔法を使って身体を維持してる。でもそれをずっとしてると凄く疲れるのよね。だから、休む時はこうやって、」
私はバケツの中に足を入れ、足先から徐々に魔法を解いて行く。
「全身をギリギリまで溶かして眠るのよ。」
喋れるように、バケツから頭だけを出しながら説明する。
「シュ、シュール過ぎる絵面だわ。というか、もう寝るの?」
「こっちは長旅から帰ってきたばかりで疲れてるのよ。しばらくは起こさないでね。」
欠伸をしながら答える。
「えっと、私はどうやって寝たら……?」
「何か掛け布団とかが欲しいなら買ってきたら?まだ夕方くらいだし、お店なら開いてると思うわ。」
「なんか、思ってたのと違う。」
「それじゃ、おやすみぃ。」
何やらローレルが騒いでいたが、頭も溶かしてしまったのでもはや何も聞こえない。
全身の緊張が解かれたため、疲れがどっと押し寄せて来る。
私はじんわりと襲い来る眠気に、逆らう事はしなかった。