第28話

文字数 1,340文字

ズバ!
ズバ!!
スバ!!!

……キャハハ☆

果たして、どれ程の時間こうしているだろうか。
目の前の赤いツインテールが揺れる度、私の氷人形が半分になる。
しかし、直ぐに再生する。

「私の氷人形ちゃんは、不死身なんだよね!何度だって甦っちゃうんだから☆」
私と同じ姿形をした氷人形が喋っている。

流石、私。
私程の天才でもなければ、これ程の芸当は不可能だろう。
赤いツインテールを100人近い氷人形が囲んでいる。
顔、体格、声。
全ての氷人形が私だった。

赤いツインテールに氷人形が襲いかかる。
そして斬られる。
再生する。
別の氷人形が襲いかかる。
斬られる。
再生する。

それの繰り返しが、延々と続いている。
私と同じ姿形をした何かが。
斬られる。
私が次々と、斬られていく。

頭がおかしくなりそうだ。

……いや。

「キャハハ。」
既におかしいのだ。
両親を殺されたあの日から。

もう、戻れない。
幸せだったあの頃は、もうどこにも無い。

ならば壊すのみ、だ。
全てを壊してやる。
少なくとも両親の仇である、この魔法都市マナランドだけは、必ず潰す。

「貴方、なんで泣いてるのかしら?」
赤いツインテールと目があった。
「……え?」

彼女は未だに、群がる氷人形を斬り続けている。
にも関わらず、氷人形達の中に紛れていた私と、目が合っている。

「そりゃ、貴方だけ泣いてるんだもの。目立つわよ。」
泣いている?私が?

目に手をやる。

涙が零れていた。

「……キャハハ。そりゃそうか。思い出しちゃったら、やっぱりダメだなぁ。」
「……。」

赤いツインテールは手を止めない。
次々と私を斬り続けている。
手をとめずに、赤いツインテールは私に向かって言う。
「前菜は飽きて来たわ?そろそろメインディッシュにしてくれない?」

老人の言っていた通りだ。
彼女のスタミナは無尽蔵と言っても過言ではなさそうだ。
スタミナ切れを起こすどころか、氷人形を斬れば斬るほど、動きのキレが増しているように見える。

「なかなかいいわね、貴方の氷人形。魔法製だからかな?斬り心地、普通の氷なんか比べ物にならないくらい気持ちいいわ。」
赤いツインテールは恍惚そうな表情を浮かべながら、私を見る。

「本気を出したら?こんなもんじゃないんでしょ?氷の魔女さん?」
「…………キャハ☆」

お望みとあらば。
本気で。
貴方を殺す事にする。
まだ私は、倒される訳にはいかないのだ。

周囲の氷人形が、形を崩してゆく。
崩れた氷が、私の前に透明な階段を作り出す。

コツンッ。
カツンッ。
階段を一段ずつ登ってゆく。

「この服はね、私のパパとママが買ってくれたんだ。私が13歳の誕生日だった時かなー。」
黒いヒールで透明な階段を踏み付ける。

コツンッ。

「このヒールはね、ママが買ってくれたのよ。素敵な女性になれますように、って。」
被っている魔女の帽子を整える。

カツンッ。

「この帽子はね、パパが買ってくれたんだ。凄い魔法使いである、最愛の娘へ、だって。キャハハ!嬉しかったな、あの時は。」

コツンッ。

「リブお姉さん、だったかな?ごめんね。私、やる事があるの。貴方に負ける訳にはいかないんだ。」

だから、

「私の為に、死んでちょうだい☆」

カツンッ。

氷の階段を登りきる。
そこはもう、学校の屋上と同じくらいの高さだった。

「メインディッシュは、私のありったけを込めた氷魔法でーす☆」
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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