第19話

文字数 970文字

喉が詰まる。
血の気が引く。
冷や汗が止まらない。

今、目の前に氷魔法を極めたと言われる賞金首が立っている。

「あれ、お姉さん?どうしたの?見るからに顔色が悪くなってるよ。」
「あ、う……。」
この少女の気分1つで、私なんて一瞬で殺せてしまうだろう。
魔法というのは、そういうモノだ。

アルド曰く、並の魔法使いですら、その魔法を悪用すれば怪我人や死者を大量に生み出すそうだ。
それを極めた人間が、しかも賞金首になるまで悪事に身を染めた人間が、ここに居る。
生きた心地などしなかった。

「その様子だと、私達の事は知っているみたいだね。うふふ。有名になるってこんな気分なのかな?」
彼女は満面の笑みで続ける。
「ケルベロスの事を知っていて、それでいてこの街まで来たって事は、それなりの理由があるよね?よかったら、その理由を教えてくれない?お姉さん?」

「そ、その、私は……。」
お前を討伐しに来た、などとは口には出来ない。
何とか誤魔化さなければ……!

「と、友達がこの街に……そう!さっき言っていた赤いツインテールの女の子なんだけど、その子がどうしてもマナランドに入りたいって聞かなくて……、私に黙って勝手に入っちゃったのよ。それを追い掛けて来たのよ私!」
我ながらナイス嘘だ。
完璧な演技であったと自負する。

「ふーん。本当に?」
「本当よ。彼女の知り合いがこの街に居るらしくてね。その知り合いと、どうしても会いたかったらしいわ。」
「…………。」
金髪の少女の瞳が、私の瞳を掴んで離さなかった。

バレた、かしら?
もしそうなら、私の人生はここで終わりかもしれない。
嫌でも緊張が走る。

「ま、いっか。なんでも。お姉さんがこの街の人間じゃないって事は、本当みたいだし。」
笑顔が怖い。

なんというか、私の嘘もバレている気がしてならない。
だが、このまま押し通すしかない。

その時だった。
ズバッ!!バリバリバリッ!!

焦げ跡と斬撃痕の残った壁が吹き飛んだ。
派手な破壊音と共に、赤いツインテールと身体の殆どを電気に変化させた老人が躍り出てきた。

「リ、リブ……!!?」
「あら、おじいちゃん。」

こちらの声に気付いたのか、リブは振り回していた刀を一旦止め、振り向いた。
「うわ……!ローレル、付いてきたの?」
赤いツインテールは心底嫌そうな顔をしていた。
「リブウウウウ!!会いたかったよおお!!」
私はリブに駆け寄った。
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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