第4話

文字数 1,193文字

「今日は収穫無し、か。残念。」
自分の職場であるテント張りで作った小さな喫茶店で一人愚痴る。
残念とは言いつつ、顔から笑顔が剥がれない。
理由は明白だ。

「まさかあれ程の上玉が手に入るとはね。あの子の稼ぎだけで、数年は遊んで暮らせそうな予感!ふふふ。」
そう言いながら、赤いツインテールの少女を思い浮かべる。

「しかし、あの刀はどうしようかな。大き過ぎて目立つから、店に置いとくことも出来ないし、かといって、どの質屋も買い取ってくれないし。うーん。」
刀に施された特殊な細工とは、何なのだろうか。
いくら考えたところで答えなど出ようはずが無い。
こちらは奴隷を売りさばくプロではあるが、武具の事などてんで分からない。
「めんどくさいし、どっかに捨てちゃおうかしら。」

そうしよう。
心が決まったため、喫茶店内にある隠し通路から地下へ移動する。
奴隷バザール。
まさに奴隷のためのバザールだ。
この地下施設を知っているのは私達奴隷商人を含め、極限られた人間のみだ。
奴隷の運搬や調教など、全てこの地下で行われる。

「そうだ、あの子の様子もちょっと見に行こうかな。今頃、プロの奴隷調教師にヒィヒィ泣かされてる事だろうし、見ものだわ。」
彼女の目が覚めたのは今日の朝方だ。
今はもう夕方であるから、半日程はいたぶられている筈だ。
「ちゃんと肌を傷つけないように調教師には依頼したのだけれど、大丈夫かな?」

彼女を幽閉している牢屋へ近づいてくる。
「あれ?」
何かおかしい。
もう牢屋はすぐそこだ。
なのに、彼女の悲鳴や調教師の怒号が無い。
それどころか、人の気配すら無かった。
「……!!」
嫌な予感がした。
急いで牢屋へ近づいて鍵の掛かっていない鉄扉をこじ開けた。

「な、なにこれ……!?」

牢屋の中には、調教師だと思われるガタイの良い男がうつ伏せに横たわっているのみだった。
息は……していない。
他には何も無い。
赤いツインテールは何処にも居なかった。
「そんな、一体どうやって!?」
彼女をこの牢屋に運んだのは私だ。
刀は取り上げたし、所持品も全て確認し、没収したのだ。
あんな小柄の少女に、大の大人の男が負けるとは思えなかった。

「刀……。刀!!?」
あの赤いツインテールは、刀に拘っているように見えた。
牢屋を脱出し、直ぐに私の所へ復讐に来ないのはあの刀を探しているからに違いない。
「倉庫!」

全力で走った。
この地下施設は迷路のように、複雑に入り組んでいる。
そう簡単にはたどり着けない筈だが、万が一たどり着けてしまったとしたら……。
考えただけで背筋が凍る。
彼女がまだたどり着けていない事を願い、無我夢中で倉庫へ走った。

やがて倉庫までたどり着く。
鍵は掛かったままだった。

「はあ!はあ!よ、良かった。まだここまではたどり着けて居ないようね。」
「今、たどり着いちゃったけどね。」
「!?」
背後に、赤いツインテールが特徴的な、リブレ・レッドラインと名乗る少女が、そこに居た。
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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