第35話

文字数 1,652文字

「アハハハハ!」
荒い息を吐きながら、私は笑っていた。
辺り一帯はまさに地獄絵図。

半分になった人間が大量に。
炭のようになった人間も大量に。

敵はもう誰も、残っていなかった。

「やっぱり人を斬るのって最高!!」
「やっぱり人を燃やすのは最高だな!!」

……ん??

ボルグと名乗る青年と声が被った。
内容も、ほぼ被っている気がした。

炎の青年と目が合う。
「人を燃やすのが好きとか頭おかしいんじゃないの?」
「人を斬るのが好きとか頭おかしいのか、お前?」

「似た者同士だと思うわ、私は。」
ローレルが近づきながら言っていた。

厳かな雰囲気のある白髭の老人は、氷の魔女に串刺しにされた挙句ぺちゃんこにされていた。

その近くに氷の魔女が座っている。

「何やってるのよ?」
「……。」

その瞳は虚ろだった。
感情の読めない色をしている。

「これからどうするつもりなの?両親の仇討ちとやらを、続行するの?」
「仇討ち……かぁ。」
氷の魔女は、無気力に言う。

「もう、いいかなぁ。なんか、そういう気分じゃ無くなっちゃった。」
「ふーん。」
ならどういう気分なのだろうか。

「リブおねえさん、良かったら私を斬ってもいいよ?人を斬るの、好きなんでしょ?」
「ん?いやいや、人を斬るのが好きとかそんなわけ」

「リブ、流石に無理があるわよ?あれだけ楽しそうに暴れておいて。しかもまた「人を斬るの最高!!」とか言ってたし。」
うるさいローレルだ。

「キャハハ。」
氷の魔女は、力無く笑う。
「なんかね、全部どうでもよくなっちゃった。マナランドを全部、ぶっ潰したかったはずなのにな。このおじいちゃんで、満足しちゃった。」

満足、か。

「思い残す事も無いかな。いいよ、私を斬っても。」

思い残す事が無い、か。

「遠慮しとくわ。」
「……なんで?」

「私も、満足してるから。マナランドに、思い残す事はないわ。」
散々魔法使いを斬れたのだ。
大満足である。
あとは中央都市セントラルへ帰るのみだ。

最も、
「なんかこの都市の偉い人を敵に回しちゃったみたいだし、もしかしたら私も賞金首扱いされるかもね。」

「その心配はねぇと思うぜ?」
ボルグとかいう魔法使いが話に入ってきた。

「あのジジイはな、実は戦争を起こそうとしてたって噂らしい。」
「戦争?」
「戦争だ。理由はよく分からねぇがな。」
ボルグは続ける。
「狙いは中央都市セントラル。この噂はセントラルにも流れてるみたいでよ、ピリピリしてたらしいぜ。」

ま、俺には関係ないが!などとボルグは言っていた。
それって、かなりヤバかったのでは??

「私達ケルベロスは、別に戦争を止めようとしてた訳じゃ無いんだけどね。たまたま、マナランドを潰したかった私達が集まって、たまたまマナランドが戦争を起こそうとしてたんだ。」
「だな。エリシアちゃんは復讐のため、電気ジジイはマナランドを乗っ取って自分の国を作るため、俺は思う存分暴れるため、ってとこか?」

……となると、
「貴方達、別に悪人じゃないって事?」
「このおじいちゃんを殺したし、もう悪人側だと思うよ、私は。」
それはなんなら、セントラルからすれば英雄なのでは?
戦争を起こそうとしてる張本人を倒したのだから。

「俺はそもそも、適当に人を燃やしてたら電気ジジイにスカウトされただけだぜ?悪人ではねぇ。」
コイツはしっかり悪人だと思う。
しかもタチが悪い。

……まとめると、
魔法都市マナランドは、中央都市セントラルに、戦争を仕掛ける準備をしていた。
でもそこに黒魔術集団ケルベロスが現れて、マナランド側の計画に支障が出た。
そこでマナランドが、ケルベロスを賞金首として登録して、私達が来た。

という流れだろうか。
この賞金首の話を斡旋したのはアルドさんだが、戦争云々の件は知っていたのだろうか。

まあいい。
この噂が本当なら、私達が魔法都市マナランドの重鎮殺しの罪に問われる可能性は低く思える。

……ハッキリ言って、ラッキーだ。
好きなだけ人を斬ってお咎め無しだなんて、最高も最高だ。

ハッ!?
もしかして、アルドさんはこれを見越して……??

「帰ったらアルドさんにお礼を言わなきゃね。」
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登場人物紹介

リブレ・レッドライン


17歳

赤いツインテールが特徴的な少女。

身長が低く、容姿も子供っぽいため、見た目だけなら13〜14才程度にしか見えない。

2メートル程もある刀、大太刀「リーヴァメルツ」を所持しており、大切にしている。

ローレル・スイートピー


17歳

緑色の髪の毛を持つ少女。

保身のためなら何でもする。

基本的にクソザコなため、戦闘能力は皆無。

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