第20話
文字数 2,200文字
緑色の髪の毛を肩まで伸ばした、セントラルに置いて来たと思っていたクズ女がここに居た。
彼女はこちらまで駆け寄って来て、私に縋り付く。
「良がっだぁ!死ぬかと思ったのよ私ぃ!!」
死んでも良かったのに。
なんて、軽口を言ってる場合では無い。
目の前に、敵が居る。
「全く。しつこい奴じゃのぉ、お主。」
「あんたこそ、さっさと斬られてくれないかしら?」
戦闘は平行線のまま長時間続いていた。
当たれば一撃なのだが、如何せん電気体になった老人は動きが早すぎる。
こちらの剣撃も、それなりの速度はある筈なのだが……。
それにしても、
「あんた、攻撃も殆どしてこないじゃないの。これじゃ日が暮れちゃうわよ!」
「そうは言ってものお……。ハッキリ言って相性が悪い。」
老人は続ける。
「お前さんに攻撃してものぉ、ワシの電気は全て、その刀が避雷針となって吸われるんじゃよ。なんか刀に触れると電気が溶けるように消えてしまうし……、ワシじゃお主には勝てそうにないわい。」
老人が攻撃してこようとすれば、すかさずリーヴァメルツを老人に向ける。
それだけで、私の防御は完成していた。
理屈はさっき老人が説明した通りだ。
「だからって、こうやって延々と逃げ回るのはどうなの?流石にイライラしてきたわ。」
「いつかバテてくれるかと踏んでいたのじゃが、その気配もない。どうなっとるんじゃお主のスタミナは。」
これでも普段から身体は鍛えているつもりだ。
それに、人を斬るというのは私にとって無常の喜びなのだ。
この喜びを甘受する事を考えるだけで、無尽蔵に体力が湧いてくるというものだ。
「その作戦、私も考えてたのよね。全身を電気体に変える魔法。多少最適化してたって、魔力の消耗は凄まじいはずよ。それをこんなに長時間使い続けられるなんて、流石は賞金首にまでなるだけあるわ。規格外よ。」
「ハッハッハ。これでも、努力家でな。努力を他人に求める上で、自分が怠ける訳にはいかんからのぉ。」
いつかは魔力切れを起こすと踏んでいたのたが、老人は未だにピンピンとしている。
黒魔術集団ケルベロス。
このレベルの魔法使いがまだ2人も存在すると言うのだから、末恐ろしい話だ。
「おじいちゃん、随分と追い詰められてるね。」
老人の隣に、金髪を腰まで伸ばし、全身に黒いドレスで纏った魔女っ子帽子の女の子が居た。
歳はいくつくらいだろうか。
12歳程度に見えるが。
「ふむ、そうじゃな。ちと魔力を使い過ぎたわ。」
「だよねー。余裕ぶってるけど、もう魔力切れも近いんじゃない?」
「ハッハッハ。やはり、お主には分かるか。流石じゃな、エリシア。」
エリシアと呼ばれた少女がこちらを見る。
正確には、私に抱き付いているローレルを……。
「よかったね、お姉さん。お友達が見つかって。」
「え、ええ。」
「キャハハ!だったら、もうこの街に用はないよね?なら、早く出ていった方がいいよ☆」
金髪の魔女の雰囲気が変わってゆく。
可愛らしいモノから、ドス黒い何かへ…。
「次、この街で貴方達を見かけたら、問答無用で2人とも殺すわ。肝に銘じててねっ!キャハッ☆」
「…………っ。」
ローレルは青ざめていた。
奴隷バザールでも色々あったが、これほど怯える彼女は初めて見る。
なるほど。
何となく話が読めてきた。
どうやらローレルは私を探していたらしい。
その道中、このエリシアと呼ばれている少女に出会ったのだろう。
そして、ローレルのこの怯えぶりを見る辺り……、
「貴方、もしかしてケルベロスの幹部?」
「キャハハ、当たり!」
「幹部が2人も目の前に……!これはビッグチャンス!!」
私は刀を構え、踏み込もうとした。
「あっ……!」
「えっ?」
私に抱き付いていたローレルの事を忘れていた。
体制を崩し、2人まとめて盛大にすっ転んでしまう。
「キャハハッ!お姉さん達アホなの?」
「ぐぬぬ……。」
「じゃあねっ!お姉さん達?」
「あっ、コラ!逃げるな!」
金髪の魔女と老人は、この場から去ろうとしている。
「本当は、街に来る余所者は全て皆殺しにするつもりだったんじゃがなぁ。魔力が尽きかけてきたのであれば、仕方があるまい。」
「赤いツインテールのお姉さん。私はね、今日は貴方達を見逃してあげるって言ってるのよ?大人しく帰ってくれないかな?私としては、関係ない人は殺したくないんだよねー。」
「あんた達をぶった斬らせてくれるなら、すぐにでも帰るわよ。」
何でも良いから斬らせろ。
私の要求は、最初からこれ一点のみだ。
「エリシア、ワシらは賞金首に登録されたそうじゃ。あの赤いツインテールの娘は、どうやら賞金首ハンターのようじゃな。ワシらの首を取りに来たそうじゃ。」
「へー、そうなんだ。そこの緑色の髪の毛のお姉さんが言ってた事と、ちょーっと違うなぁー?」
「う、……!」
「まあいいか、何でも。」
金髪の魔女は老人の肩に手を置く。
「さっきも言ったけど、私は無関係な人間は殺したくないんだ。だから、2人とも見逃してあげる。でも、もし、お姉さん達がまだ戦うつもりなら、そこの魔法使い養成学校までおいで?」
そう言って彼女は一際大きな学び舎を指さす。
「私達が占領してる拠点なんだ。あそこまで来たら、その時はちゃんと殺してあげるから!じゃあねっ☆」
「待てコラ!」
言うが否や、魔女と老人は消えてしまった。
「テレポートの魔法……か。はぁぁぁ。」
私は体勢を整えながらため息を吐く。
獲物を逃した。
魔法使いの斬り心地は、お預けという事だ……。
彼女はこちらまで駆け寄って来て、私に縋り付く。
「良がっだぁ!死ぬかと思ったのよ私ぃ!!」
死んでも良かったのに。
なんて、軽口を言ってる場合では無い。
目の前に、敵が居る。
「全く。しつこい奴じゃのぉ、お主。」
「あんたこそ、さっさと斬られてくれないかしら?」
戦闘は平行線のまま長時間続いていた。
当たれば一撃なのだが、如何せん電気体になった老人は動きが早すぎる。
こちらの剣撃も、それなりの速度はある筈なのだが……。
それにしても、
「あんた、攻撃も殆どしてこないじゃないの。これじゃ日が暮れちゃうわよ!」
「そうは言ってものお……。ハッキリ言って相性が悪い。」
老人は続ける。
「お前さんに攻撃してものぉ、ワシの電気は全て、その刀が避雷針となって吸われるんじゃよ。なんか刀に触れると電気が溶けるように消えてしまうし……、ワシじゃお主には勝てそうにないわい。」
老人が攻撃してこようとすれば、すかさずリーヴァメルツを老人に向ける。
それだけで、私の防御は完成していた。
理屈はさっき老人が説明した通りだ。
「だからって、こうやって延々と逃げ回るのはどうなの?流石にイライラしてきたわ。」
「いつかバテてくれるかと踏んでいたのじゃが、その気配もない。どうなっとるんじゃお主のスタミナは。」
これでも普段から身体は鍛えているつもりだ。
それに、人を斬るというのは私にとって無常の喜びなのだ。
この喜びを甘受する事を考えるだけで、無尽蔵に体力が湧いてくるというものだ。
「その作戦、私も考えてたのよね。全身を電気体に変える魔法。多少最適化してたって、魔力の消耗は凄まじいはずよ。それをこんなに長時間使い続けられるなんて、流石は賞金首にまでなるだけあるわ。規格外よ。」
「ハッハッハ。これでも、努力家でな。努力を他人に求める上で、自分が怠ける訳にはいかんからのぉ。」
いつかは魔力切れを起こすと踏んでいたのたが、老人は未だにピンピンとしている。
黒魔術集団ケルベロス。
このレベルの魔法使いがまだ2人も存在すると言うのだから、末恐ろしい話だ。
「おじいちゃん、随分と追い詰められてるね。」
老人の隣に、金髪を腰まで伸ばし、全身に黒いドレスで纏った魔女っ子帽子の女の子が居た。
歳はいくつくらいだろうか。
12歳程度に見えるが。
「ふむ、そうじゃな。ちと魔力を使い過ぎたわ。」
「だよねー。余裕ぶってるけど、もう魔力切れも近いんじゃない?」
「ハッハッハ。やはり、お主には分かるか。流石じゃな、エリシア。」
エリシアと呼ばれた少女がこちらを見る。
正確には、私に抱き付いているローレルを……。
「よかったね、お姉さん。お友達が見つかって。」
「え、ええ。」
「キャハハ!だったら、もうこの街に用はないよね?なら、早く出ていった方がいいよ☆」
金髪の魔女の雰囲気が変わってゆく。
可愛らしいモノから、ドス黒い何かへ…。
「次、この街で貴方達を見かけたら、問答無用で2人とも殺すわ。肝に銘じててねっ!キャハッ☆」
「…………っ。」
ローレルは青ざめていた。
奴隷バザールでも色々あったが、これほど怯える彼女は初めて見る。
なるほど。
何となく話が読めてきた。
どうやらローレルは私を探していたらしい。
その道中、このエリシアと呼ばれている少女に出会ったのだろう。
そして、ローレルのこの怯えぶりを見る辺り……、
「貴方、もしかしてケルベロスの幹部?」
「キャハハ、当たり!」
「幹部が2人も目の前に……!これはビッグチャンス!!」
私は刀を構え、踏み込もうとした。
「あっ……!」
「えっ?」
私に抱き付いていたローレルの事を忘れていた。
体制を崩し、2人まとめて盛大にすっ転んでしまう。
「キャハハッ!お姉さん達アホなの?」
「ぐぬぬ……。」
「じゃあねっ!お姉さん達?」
「あっ、コラ!逃げるな!」
金髪の魔女と老人は、この場から去ろうとしている。
「本当は、街に来る余所者は全て皆殺しにするつもりだったんじゃがなぁ。魔力が尽きかけてきたのであれば、仕方があるまい。」
「赤いツインテールのお姉さん。私はね、今日は貴方達を見逃してあげるって言ってるのよ?大人しく帰ってくれないかな?私としては、関係ない人は殺したくないんだよねー。」
「あんた達をぶった斬らせてくれるなら、すぐにでも帰るわよ。」
何でも良いから斬らせろ。
私の要求は、最初からこれ一点のみだ。
「エリシア、ワシらは賞金首に登録されたそうじゃ。あの赤いツインテールの娘は、どうやら賞金首ハンターのようじゃな。ワシらの首を取りに来たそうじゃ。」
「へー、そうなんだ。そこの緑色の髪の毛のお姉さんが言ってた事と、ちょーっと違うなぁー?」
「う、……!」
「まあいいか、何でも。」
金髪の魔女は老人の肩に手を置く。
「さっきも言ったけど、私は無関係な人間は殺したくないんだ。だから、2人とも見逃してあげる。でも、もし、お姉さん達がまだ戦うつもりなら、そこの魔法使い養成学校までおいで?」
そう言って彼女は一際大きな学び舎を指さす。
「私達が占領してる拠点なんだ。あそこまで来たら、その時はちゃんと殺してあげるから!じゃあねっ☆」
「待てコラ!」
言うが否や、魔女と老人は消えてしまった。
「テレポートの魔法……か。はぁぁぁ。」
私は体勢を整えながらため息を吐く。
獲物を逃した。
魔法使いの斬り心地は、お預けという事だ……。