第33話 バルジ視点 民を引き連れて

文字数 461文字

「しかし、申し訳ありません」
「いえいえ、なんのその我々の使命です。お気になさらず」

 目の前の屈強なイスラムの戦士を相手に自分達は互いに頭を下げていた。

 若いのう。
 そして、強い。かような強者を破るとはヴォイド王とは何者じゃろうか?
「バルジ殿、我々も力を尽くしますので。ここで引き下がってはアッラーの御前にも立てませぬ」
「では、頼りにしますかな、サラディン殿」

 手負いとは言え、闘気は衰えずか。大した若者だ。世界は真に広い。これほどの戦士と出会えるなどとはな。

「難民を引き連れ砦に出発しては良いものの護衛の数が足らん有様で申し訳ない」
「いえ、バルジ殿こそ歯痒い想いをなされています。心配ですね。王都の皆が」
「老婆心というものでしてな。若者に余計な気持ちを抱くのですよ」

 さて、そう話している内に来たな。

「サラディン殿。かつて十字軍を退けたイスラム世界の英雄の末裔よ。わしと共に敵の首魁を討って下さいますかな?」
「大いに喜んで」
「各員、魔物を討伐せよ! 民に触れさせるな!」

 剣を抜いて構える。待ちそびえるは人の姿をした人外。
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