第35話 バルジ視点 森の賢者の許に

文字数 639文字

「どういうことでしょうか?」

 首を傾げるサラディンの前に憶測を口にする。

「してやられたかも知れませんな。敵の狙いは王都、ひいては聖杯と聖槍にあるかも知れませんな」

 民を上手く利用して主戦場から騎士団を分離させたか。
 となるとこちらも手を打たなくてはなるまい。

「近衛騎士団長殿」
「ハッ、バルジ老。何でございましょう?」
「こちらはもうおそらく大丈夫じゃ。サラディン殿と言う歴戦の戦士もおる。上手く協力してやる様に。わしは王都に戻る」
「しかし、バルジ老お独りで戻られたとしても……」
「安心せい。ここは知己がおる地でな。ちょいと力を借りに行くわい」

 そう初めからここが目的でもあったのだ。
 皆と別れて森の奥へと足を運ぶ。

「さてと森の賢者の家はどこじゃったかのう? 今も飼っとると良いのじゃが」

 しばらくして巨木の上に家があるのを見付ける。

「おーい、爺さんや」
「誰が爺さんじゃ! お主も爺さんじゃろが!」

 後ろから振り下ろされた杖を難なく避けて言う。

「おるんなら返事位せえよ。にしてもお主はいつ見ても若いな」

 若い美しい長身の赤毛の男を視て自分は正直に伝えることにした。ことのあらましを説明する。

「何とパルジファル様にその様な脅威が迫っておったとはのう。早速準備しなければ」
「次いではあれを借りたいのじゃが」
「構わん。パルジファル様の危機とあっては惜しみなく出そう」
「ありがたい。森の賢者よ」
「止せ。今生の別れでもあるまいに。頼れる者は頼れ」
「では、例のものを」

 そう言って小屋に入った。
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