第2話 定められた出会い

文字数 653文字

「誰か! 誰かいないか!」
 みすぼらしい樽の中に人の気配を感じた自分はこっそり覗いた。
「ヤアッ!」
「ウオッ!」
 突然子供がナイフを突き出して来た。一瞬驚いたが子供の動きだ。騎士の長にはゆったりした動作にしか見えない。
「落ち着け、私は人間だ」
 ナイフを持った手を優しく抑えると少年程でもない子供が二人見えた。もう一人は女の子の様子だ。
「かろうじて不幸中の幸いか。君達の名前は?」
「エブリ・バディ」
「ルナ・アース」
 二人はそう答えた。
「よく頑張った。私は騎士のパルジファル」
「誰? どこの人だ?」
「馬鹿ね。エブリ、この方は聖杯を護る騎士様よ。お母さんから聞いたことあるわ」
「お母さんはどこに行った?」
 女の子は急に涙目になって辛そうに絞り出した。
「『魔物が来たから逃げなさい』って言って剣を持って出て行きました。多分……」
「そうか……」
 答えを聞かなくても想像がついた。彼女のことだ。勇敢に戦って散ったのだろう。
 彼女こそ次代の騎士王に相応しかったのだ。レイア・アース。君はもうこの世にはいないのだろう。
 しかし、おかしい。魔物が歩いていない。村人を襲ってそのまま帰ったのか? にしては手際が良すぎる。
「二人とも私から離れない様に。もう大丈夫だ」
 一瞬、視界の隅に黒衣が見えた気がした。振り向くと誰もいない。何者だろうか? レイアを葬った人物とはいかなる人物か。
 魔物ではない気がする。もっとまがまがしい何かの気配を微かに感じ取れる。
 だが、こちらに攻め入る気配もない。知性があり、魔物を引き連れていける何か。
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