第24話 エブリ視点 エブリの決意

文字数 883文字

 次に起きた時はベッドの中だった。
「エブリ」
 ルナが看病してくれたのか? そう言いそうになるのを抑えて冷静に現実を判断する。
「そうか、負けたか」
「あんな勝ち方、嬉しくないよ」
 ルナはすねたご様子だ。
「いやー、計算外だったな。極限があそこまで体力を使うとは思わなかった」
「嘘ついてない?」
「嘘は言わない。ルナの読みが良かっただけだ。運も含めてな」
「ふーん」と不満げに納得した素振りを見せるルナ。
「ルナ」
「うん?」
「おめでとう」
「はいはい、でも勝負はまだ決着したつもりはないからね。又、再戦よ」 
「いや、すまん。俺は旅に出ようと思うんだ」
「はあ? また何で?」
「旅の師匠を探すついで色々な剣士に教えを乞いたい。世界は広い。まだ俺達の知らない凄腕の騎士がいるかも知れないだろう?」
「先生の行くあてを知っているの?」
「知らない。だから期限を設けるよ。一年後に帰ってくるつもりだ」
「一年でいくつもの流派を極めようって結構無謀よ」
「それ位しなきゃ騎士団への加入は認められないだろう?」
「なるほどね、武功を挙げて騎士団に加入しようと言うのね?」
「基本の型以外にも色々な型がある。それらを手土産に持って帰れば加入も考えてくれるかも知れない」
 ルナは呆れたように溜め息をつく。
「どうしてそこまで計算出来て肝心の試験では計算出来なかったのかしら? 後でゆっくり説明して欲しいわ」
「今、理由を言っても良いか?」
「ええ、どうぞ」

「ルナと一緒の道を歩みたかったからだ」

 ルナは表情を赤らめてすねる。

「エブリの意地悪。大体そんなことはお父様が反対するに決まっているわ」
「だから騎士王を実力で納得させるのさ。来年の今頃に」
「本気?」
 真顔でうなずく。ルナはどうしたら良いのか分からないのか目頭を押さえながら語る。
「エブリの気持ちは分かったわ。なら私も待つ」
「さすが母さんの血を引いているな。度胸も大したものだ」
「エブリ、あなたねえ、時々直接過ぎるって思わない?」
「自分の心に従って生きているものでね」
「はあ、そうよね」
 表情を赤らめてルナはうなだれる。
「しっかりと帰って来なさいよ」
「もちろんだ」

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