第3話『魔王、テンション上がる。』
文字数 2,525文字
ゆるーく構える魔王達はさておいて、一方魔界から遥か遠くの遠くの、そのまた遠くにある小さな村。
争いなんてなんのその。
え? なにそれおいしいの? を地で行くような、のどかでへんぴで、それでいて、退屈な村。
麗らかな日差しが村全体に降り注ぎ、近くの森林からは鳥の囀り、木々達の唄が聞こえていた。村人はみんな笑顔で生き生きと農作業をし、或いは商売をして、のんびりと生活を繰り返す。
そんな村の中にある、小さな宿屋。そこに、勇者はいた。
そして――。
――勇者は、へこんでいた。
――遡ること、数時間前。
金髪の青年――リューがそう呟くや、目のまえに突如魔法陣が浮かび上がる。
そしてそこから、一つの影が湧き出て来た。そして……。
ふと、何かの駆ける音が。
その足音が近付いて来る――。幻影がそう分かったと同時に、彼の体に閃刃が走った。
その一撃を受けた幻影は、力なく床に倒れた。
そして刃を放った通り魔的犯人――勇者は、ゆっくりと立ち上がった。
ひゅるる……と。花火が打ちあがるような音が幻影に近付いてきた。
幻影が気付くや、彼の体は爆発を起こす。
爆風に呑まれた幻影は、壁際へと弾き飛ばされてしまった。
そして立ち込める煙の中で、リューは最っ高の笑顔を浮かべながら、満足げに言い放つ。
謝る幻影の手からは光が溢れ出す。それは徐々に巨大になっていき、やがて
建物もろとも勇者達を吹き飛ばすのだった。
ぎゃあああああああ……!!
悲痛な勇者たちの叫び声は、爆音の中に消えていった。
――そして、今。
……。
……こうして、勇者たちのお先真っ暗な旅は始まるのだった。
そして、一方その頃、魔王はというと……。
――ダンゴくん! マジかそれ!
そうやってトリートメント使うのか!
え? 私、いつもこうやって使ってますが変ですか?
変て言うかスゲエ!
うはっ! めっちゃテンション上がって来た!!
……お風呂で、はしゃいでいたのであった。