第9話『魔王、対決する。③』
文字数 3,281文字
ユーンが激戦を繰り広げている最中、そこから遥か離れた森の中。
太く延びた木々の隙間からは優しい木漏れ日が溢れ、森の香りが辺りに広がる。
そして、その中に2つの椅子が並び、そこにはマリアンナとリューが座っていた。
ティーカップを片手に持ち、実に優雅に……。
さっきのあなたの移動魔法、見事だったよ。完璧とも言える。
詠唱の速度、とてつもない量のマナの形成、そして移動の不快感すらなく、尚且つそれぞれの組み合わせをほぼ同じ立ち位置で別々の場所に送り出す技。
マナの量も桁違いのうえ、その使い方も完璧と来たもんだ。
自慢になるけど、小さい頃から天才とか言われてたんだ。僕は。
魔術の基礎は幼年部に全てマスターしたし、小等部ではあらゆる魔術を使えていたんだ。
お前は天才だとか、お前に出来ないことはないとか。
そんなことを言われてきたんだよ。
そして、森の中のお茶会は続いていく……。
一方その頃、セルフィーとエレナは、なせだか人間界の王都……それも、王族が住まう城の中にいた。
煌びやかな装飾に、見るからに高級感のある机、椅子、食器類。絨毯は皺もなく、部屋には埃一つない。
遠くからはクラシックの音楽が奏でられ、会話を阻害することなく、エレガントな雰囲気を演出する。
そして男性は、一礼の後、部屋を後にする。
(……王族の軋轢に苛まれながらも国を想う悲劇の姫君。母亡き今、唯一の肉親である王は国の政に追われ到底親子とは呼べぬほど希薄な関係。育ての親に支えられ逆境に負けないほどに誇り高く高貴に成長し今まさに世界の敵たる魔王討伐を果たすべく足を踏み出す健気な少女……!)
エレナのこうげき!
かいしんのいちげき!
セルフィーは精神的ダメージを受けた!
エレナvsセルフィーの乙女力対決……。
セルフィーは苦戦を強いられていた……!