第1話『魔王、驚愕する。』
文字数 2,218文字
とある世界の果て。空には常に暗雲が漂い、陽の光を遮る。そのせいか昼間だというのに辺りは薄暗く、緑も少ない。大地はひび割れ、刺々しい岩が目立つ。
まさにそこは魔界と呼ぶにふさわしいところであった。普通であれば誰も立ち寄らないような、死の大地。
そこには、似つかわしくない城があった。
その中で、一人の男の声が響いていた。
とそこへ、廊下の奥から足音が。小刻みに、軽快に。
まるで言い逃げの如く、魔王は彼方へと走り去って行った。猛烈な勢いで。
そしてしばらくした後、玉座の間には魔王をはじめ彼の部下達が顔をそろえていた。
そして彼らは、背伸びをしたり雑談しながら部屋を後にしていく。
その光景は、さしずめ授業が終わった後の教室のようであった。
かくして物語は切って落とされる。
はてさて、やる気のない部下を抱えた魔王はどうするのか。
魔王の苦悩が始まる……。