第4話『魔王、罵倒される。』
文字数 1,690文字
当然だ。
如何にアルマとて、あの結界を破るのは至難……。それに加え、勇者のおかげで満身創痍と来ている。
脱出など到底無理であろう。
くくく……。
だが憂いもある。
この国の姫……“憑代”の娘だったか。
早く捕えねばなるまい。
その小娘一人が厄介なのだよ。
どうやら、この国の人間どもから絶大な支持を得ているようだ。
おそらくアルマ一味同様、勇者の連れである奴も我の正体に気付いているであろう。
余計なことを言われては些か面倒なことになるやもしれん。
放置していても殺しても厄介。
なるほどな、面倒な存在だ。
向こうからこちらに飛び込んで来てくれるのであれば話が早いのだがな。
実に腹立たしい小娘だ……。
も、申し訳ありません!
ですが、至急の知らせが……!
接見を希望されておられますが、お通ししてよろしいでしょうか!?
……なんと、本当に向こうから出向いて来るとはな。
これは面白い……。
皆のもの、よくぞ戻った。
……して、その者らが……。
はい。
私は今朝、仕事のためにこの王都まで参じました。するとどうでしょう、門のところに怪しげな集団がいるではありませんか。
そしてそこには、なんと姫様のお姿が……。
状況として、姫様は捕らえられていました。
助けるしかないと決意を固めた私がすかさず声をかけたところ、突如魔族たちが襲い掛かってきました。
大切な姫様をお助けするため、私は迎え撃ちました。
そして凶悪なへっぽこ魔王のへっぽこ配下達をギッタギタのメッタメタに叩きのめし、見事姫様と付属の二人を救い出したのです。
はい。
私にかかれば、性格が捻じ曲がったメイドや超ド級のバカ剣士やキャラ設定が中途半端なシスターなど捕えるのも容易うございました。
これであのスーパーウルトラ級の間抜けで阿呆で素っ頓狂で角がなんか生理的に受け付けない魔王までいればよかったのですが……まあ、とにかくこうして連行させていただいた次第であります。
うむ。大義であった。
そちに何か褒美をくれてやろうか……。
……それであれば、勇者様と会わせてもらえないでしょうか?
この城で勇者様のお姿を見たという話を耳にしましたので。
ぜひ、真の英雄たる勇者様と話がしとうございます……。
父上、この者の功績は大変大きいものです。
ぜひ、願いを叶えてあげては……?
……残念だが、勇者はまだ戻っておらぬ。
他人のそら似であろう。
……それならば、仕方ありません。
ならばせめて、名高い勇者一行と食事をさせていただきませんか?
うむ、それならばよかろう。すぐに宴の準備をする。
兵達よ、魔王の配下を縛り上げ、牢に入れておけ。
そしてイシリア達は牢へ、ニコル達は客室へと案内された。
はてさて、彼らの運命はいかに。
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