第4話『魔王、罵倒される。』

文字数 1,690文字

 ――王の間。
……。
……アイビスか。何用だ?

魔王達は地下で大人しくしている。

その報告だ。

当然だ。

如何にアルマとて、あの結界を破るのは至難……。それに加え、勇者のおかげで満身創痍と来ている。

脱出など到底無理であろう。

くくく……。

全て順調……というところか。

だが憂いもある。

この国の姫……“憑代”の娘だったか。

早く捕えねばなるまい。

小娘一人が支障になると……?

その小娘一人が厄介なのだよ。

どうやら、この国の人間どもから絶大な支持を得ているようだ。

おそらくアルマ一味同様、勇者の連れである奴も我の正体に気付いているであろう。

余計なことを言われては些か面倒なことになるやもしれん。

それならば、我らが出向いて消せばよかろう。

あまりことを大きくするな。

今はまだ、な。

放置していても殺しても厄介。

なるほどな、面倒な存在だ。

向こうからこちらに飛び込んで来てくれるのであれば話が早いのだがな。

実に腹立たしい小娘だ……。

 その時、王の間に一人の兵士が駆け込んで来た。
お、王様!

騒々しいぞ。

何事だ。

も、申し訳ありません!

ですが、至急の知らせが……!

姫様が城に戻られました!
マジで!?
そのうえ、魔王一味を捕らえておられます!
マジで!?
接見を希望されておられますが、お通ししてよろしいでしょうか!?

通せ!

すぐにだ!

はっ! すぐにお通しいたします!

 そして兵は王の間を出て行った。

……なんと、本当に向こうから出向いて来るとはな。

これは面白い……。

主よ、油断するでない。

何か策があるのやもしれん。

ならば策ごと葬るまでよ……。
 しばらくして、王の間の重い扉は開かれた。
……父上、只今戻りました。
……。
……。
皆のもの、よくぞ戻った。

……して、その者らが……。

……。
……。
……。
はい……。

魔王に使える魔族の者らです。

ふむ……。確かに、“不届きな顔”をしておるわ。
アンタほどじゃないっつーの。

小娘が言いよるわ……。

それと、その者は……?

――お初にお目にかかります。

ニコルと申します。

そうか。

ニコルよ、なぜそちがこの場にいるのだ?

はい。

私は今朝、仕事のためにこの王都まで参じました。するとどうでしょう、門のところに怪しげな集団がいるではありませんか。

そしてそこには、なんと姫様のお姿が……。

状況として、姫様は捕らえられていました。

助けるしかないと決意を固めた私がすかさず声をかけたところ、突如魔族たちが襲い掛かってきました。

ふむ……。

大切な姫様をお助けするため、私は迎え撃ちました。

そして凶悪なへっぽこ魔王のへっぽこ配下達ギッタギタのメッタメタに叩きのめし、見事姫様と付属の二人を救い出したのです。

なんと……捕らえたのはそちであったか。

はい。

私にかかれば、性格が捻じ曲がったメイド超ド級のバカ剣士キャラ設定が中途半端なシスターなど捕えるのも容易うございました。

これであのスーパーウルトラ級の間抜けで阿呆で素っ頓狂で角がなんか生理的に受け付けない魔王までいればよかったのですが……まあ、とにかくこうして連行させていただいた次第であります。
アンタ、後で覚えてなさいよ。
まあまあ、ここはニコルちゃんに任せてみましょう。

うむ。大義であった。

そちに何か褒美をくれてやろうか……。

……それであれば、勇者様と会わせてもらえないでしょうか?
……なに?

この城で勇者様のお姿を見たという話を耳にしましたので。

ぜひ、真の英雄たる勇者様と話がしとうございます……。

……。
……。
……。

父上、この者の功績は大変大きいものです。

ぜひ、願いを叶えてあげては……?

……残念だが、勇者はまだ戻っておらぬ。

他人のそら似であろう。

……それならば、仕方ありません。

ならばせめて、名高い勇者一行と食事をさせていただきませんか?

うむ、それならばよかろう。すぐに宴の準備をする。

兵達よ、魔王の配下を縛り上げ、牢に入れておけ。

はっ!
 そしてイシリア達は牢へ、ニコル達は客室へと案内された。

 はてさて、彼らの運命はいかに。




 ……一方その頃、魔王と勇者は……。




……スピー……スピー……。
……グォォ……グォォ……。
 ……普通に、昼寝を堪能していたのであった……。
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登場人物紹介

魔王
若くして魔界を統べた英雄的新米魔王
めちゃくちゃ強いが、苦労人
ツッコむつもりもないのにツッコまざるをえない部下を多数持つ

イシリア
魔王の城のメイドさん
意外と真面目
魔王とは幼馴染

セルフィー
幼女と見せかけて単に幼児体型なだけ
ジョセフに恋する自称乙女
一度回復魔術を使えば、超絶スパルタウーマンと化す

スレイブ
戦闘&修行マニア
なんとか魔王をこっちへ引き込もうとしている
普通に強い

マリアンナ
魔界随一の魔術使い
敵であるはずの神を崇拝
いちおう味方

ジョセフ
色々謎な優男
そしてイケメン
女好き

ダンゴ
魔王の部下
一番の理解者兼一番の被害者
本名はルドル・バルト・シュバエルとかいう長ったらしい名前らしい
見た目からダンゴと呼ばれている

勇者
選ばれし者、英雄を約束されし者
そしてヤル気も既に失われし者
布団の中をこよなく愛する者

エレナ
回復術士
女神の如き優しさと寛大さを持ち合わせる聖女
単に天然なだけという噂もちらほら
ファンクラブは星の数ほどあるという

ユーン
女戦士、豪傑豪胆
勇者一行ツッコミ担当
そして勇者一行唯一の常識人

リュー
魔術師担当
おっとりとした口調が特徴
腹黒さは魔族並

ルルリエ

天界の聖天使。マジ天使。
大天使長リヒテルの実の妹
唯一とも言える良識人
魔王一派に圧倒されているが

リヒテル

天界の大天使長
なんか色々考えてるっぽい
めちゃくちゃ強い

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