第3話『魔王、仕切る。』
文字数 2,441文字
とんだグータラ魔王ですわ。
皆々、きちんと朝には起きてましたのよ?
スレイブですらとっとと修行に出てったというのに……。
白熱し過ぎですぞ!
いったい何回皆にババ抜きをさせたと思っているのですか!
よくもまあそんなにしたものね。
付き合う私らも私らだけど……。
あそこまでババ抜きが弱いと、もはやある意味才能ですわね。
あんたって妙なところだけ負けず嫌いなんだから。
勝つまでやる!なんて言うからよ。
そうそう!
僕とルルリエちゃんの一騎打ちだったけど、僕が勝ったんだよね!
もっとも、それまでルルリエさんは33回連続で1位抜けでしたがね。
だいたいさ。
最後はルルリエがわざと負けてたじゃない。
ルルリエ、あいにくながら否定は無理がありますわ。
何せこの御人、顔芸並に顔に出てたわけですし。
ジョーカーに手を伸ばせば、はち切れんばかりの満面の笑みを浮かべていましたね。
逆にジョーカー以外のカードはこの世の終わりのような顔をしていましたしね。
あれに素で負けるなら、世の中生きていけないわよ。
生存能力自体に異常をきたしてるわ。
それにそれまで33回連続1位だった人が突然最後になって33回連続ドベに負けるなど、もはや天文学的な確率ですぞ。
おかげで終わりなき勝負に終止符が打たれましたしね。
それはそうと、なんか忘れてる気がするんだけど気のせいかな?
あ、あの……幻影さんのこと、ではないでしょうか……。
少し前は瞬殺されていたのに、その幻影を破るとは……。
対策を取るべきですわ。
もはや並の魔物でも太刀打ちできないと考えるべきですし、そうなればこの城へ来るのも時間の問題ですわね。
落ち着きなさいダンゴ。
そもそも、今どこにいるのは分からないじゃない。
魔術で魔界全土を索敵をしてみましたが、気配はありませんね。
おそらく既に魔界には入っているでしょうし、勇者さん達の中にも相当な魔術使いがいるようです。
交代で門から監視するというのはどうでしょうか。
以前魔王城の周囲を見ましたが、人間界から来るのであれば荒野を抜けなければなりませんし、肉眼で一行を捉えることは可能だと……。
限られた人員と現在の状況からすれば、最善とも言える策ですね。
うん! 採用!
さっすがルルリエちゃん!
頼りになるー!
別の誰かに居場所を奪われそうに感じる気持ちはわかりますが、焦る必要はありませんことよ?
あなたにはあなたにしか出来ないことがありますわ。それを努々忘れずに、自分に自信を持ってくださいませ。
よっしゃ!
順番は僕が独断と偏見で勝手にサクサク決めさせてもらうからね!
文句はダンゴくんに言ってよね!
黙らっしゃい!
それと、はいもう順番決めた!
最初はマリアンナさん! で、あとは順次言ってく!
そうだね。
仮に発見が遅れても、少なくとも城への侵入は断固として阻止しなきゃ。
そうだね。
マリアンナさん、何かあったらすぐ教えてね。
全てをマリアンナに託した魔王達は、城の奥へと戻って行った。
かくして、勇者進攻を阻止するための戦いが始まったのだった。最初の番人はマリアンナ。
そして彼女は……。
さぁ、どうぞこちらへ。
紅茶の準備をしておきましたので、ゆっくりしてくださいね。
ですが、殺気や妙な気配は一切感じられませんでしたね。
同感だね。
たぶんここは魔王城じゃないんじゃないかな?
じゃなければ、あそこまで無防備に招いたりしないだろうし。
……あっさりと、勇者達の侵入を許すのであった……。
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