第5話『魔王、意気投合する。』

文字数 2,231文字

 数分後、マリアンナに案内され魔王はのこのこ勇者一行の前に現れた。
 そして勇者一行は、魔王を笑顔で出迎えるのだった……。
どもー!
はじめまして!
この城の主です!
あ、どもー。
勇者ですー。
HAHAHAHA!
冗談が上手ですねー!
はじめまして、エレナと申します。
わざわざご足労いただき申し訳ありません。
マリアンナさんから手厚い歓迎を受け、ぜひお礼を言いたかったのでご了承ください。
僕は何もしていないけどさ。
まあ喜んでくれたのならマリアンナさんも満足なんじゃないかな?
はい。大満足です。
それにしてもクッキーのいい匂いが残ってるなぁ。
それでしたら、クッキーの残りを持ってきますね。
 そしてマリアンナは、一人城へと戻って行った。
ねえリュー。
なんか、見た目魔族っぽくない?
角なんか生えてるし。ヒソヒソ
きっと擬態じゃないのかなぁ。
ああやって魔族に扮しているんだよ。きっと。ヒソヒソ
ここは魔界の果てですからね。
周りも敵だらけですし、そうでもしないと生きていけないのだと思います。ヒソヒソ
まじかー。
けっこう大変そうだなー。ヒソヒソ
ん? どうかした?
……いえ、あなた方も大変だなと思いまして……。
分かってくれるんだ!
そうなんだよ! 超大変なんだよ!
いつ(勇者達が)攻めて来るかも分かんないし!
確かになー。
こんな魔界の奥地に基地を構えてるし、いつ(魔王達が)攻めて来るかも分からないもんなー。
でももう安心していいんじゃないかなぁ。
僕達が来たわけだし。
そうですね。
そのための私達ですので。
え……?
それって……。
奴ら(魔王達)は、必ずアタシ達が倒してみせるよ!
おおおおお!?
(勇者達を)倒してくれるの!?
めんどくさいけど、そうしないと帰れないみたいだしなー。
いやー心強い!
僕から頼もうって思ってたけど、話が早くて済んだよ!
それはよかった。
それで、この基地の兵はどれくらいいるの?
……兵は、いないよ。
え……?
申し訳ないんだけどさ、僕のせいで、みんないなくなっちゃったんだよ……。
そ、そんな……。
まあ城には何人か残ってはいるんだけど、正直心許なくてね……。
……まじかよ。
たぶん、攻められたんだろうね。
その時に、兵のほとんどが……。
酷い……酷過ぎるよ……。
いや悪いのは僕だからさ。
兵達は何も悪くないんだよ。ほんと、後悔してるよ……。
そんな……自分を責めないでください。
悪いのはあいつら(魔王達)だよ!
あいつらが攻めて来たから……!
許せないね……。
いや、彼ら(勇者達)は関係ないんじゃ……。
私達がもっと早く来ていれば……。
いやそれも関係ないと思うんだけど。
え……?
私達がいても、関係ない……!?
それほど、敵は強大って言いたいんだろうね……。
まあ君達が来てくれて助かったよ!
一緒に頑張ろう!
そんで、あいつら(魔王達)今どこいんの?
さあ……。
彼ら(勇者達)がどこにいるのか見当もつかなくてさ……。
まずは情報収集が優先ですね。
敵の行動が読めないと、後手に回るからね。
そこら辺の魔族を片っ端から倒せばいいんじゃないの?
なぜに!?
さすがにそれで黙ってるわけないし、手っ取り早いと思うけどなぁ。
活躍の場を奪われる的な?
え?
え?
敵(魔王達)の数はおそらく膨大でしょうからね。
圧倒的な数的不利を補うために、罠なんかもいいかもしれませんね。
そんなに大勢なの!?
多くて4人とかじゃないの!?
え……?
さすがに数人とは思えませんが……。
ほぇぇ……今の勇者ってそんな感じなのかぁ……。
え?
え?
問題は、魔王がいつ出て来るかってところだね……。
疲弊したところに登場ってのは、さすがにキツイだろうし……。
いや最初っから出ますよ。
え!? 嘘!?
いきなり最終決戦なの!?
当然でしょ。
さすがにみんなが頑張ってるところで傍観なんて出来ないし。
ず、ずいぶんと仲間思いなんだね……魔王って……。
いやぁ照れるなぁ……。
どうしてあなたが照れるんですか……。
そりゃぁ面と向かって言われたら照れるでしょ。
え?
え?
とりあえず魔王出てきたらぶっ飛ばせばいいだけじゃん。
シンプルでめんどくさくなくていいじゃん。
出たらぶっ飛ばされるの!?
そりゃそうじゃん。
遠慮なくフルボッコすればいいじゃん。
じゃあ出ないよ!
絶対出ないってば!
いや出てこないと困るだろ。
殺る気満々!?
出るの超嫌なんですけど!
え?
え?
……。
……。
……。
……。
……。
――みなさーん。
クッキーと紅茶のおかわり持ってきましたよー。
あ……はい……。
ちょうどいいところに。
マリアンナさん、ちょっとこっちに……。
……?
なんでしょうか。
 そして魔王と勇者達は、少し距離を取る。
ねえねえマリアンナさん。
あの人たちって、マリアンナさんのお客人なんだよね。
そうですよ。
あの人たち……誰?
勇者さん達です。
あーなるほど……。
どうりで話がかみ合わないわけだ……。
納得納得……。
……って、
をい。
 そして、勇者サイド。
なあ。たぶん俺ら全員なんとなーく察してるんだろうけどさ……。
あ……うん……。
たぶん……。
考えたくはありませんが……。
あいつ、
魔王じゃね?
 そして双方向かい合い、しばし沈黙が流れる。
……ハハハ。
……ハハハ。
アハハハ……!
アハハハ……!
アッハッハハハハハッハハハハハッハハハハハハハハハ……!!
アハハハハハハハハッハハハッハッハハハハハハ……!!
敵襲ぅぅぅ!!
超敵襲!!
今勇者来てる!!
超来てるよぉぉ!!
魔王魔王!
やべぇ魔王だよ!
目の前に魔王!
超普通にいるよ!
 かくして、決戦の火蓋は切って落とされたのだった……。
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登場人物紹介

魔王
若くして魔界を統べた英雄的新米魔王
めちゃくちゃ強いが、苦労人
ツッコむつもりもないのにツッコまざるをえない部下を多数持つ

イシリア
魔王の城のメイドさん
意外と真面目
魔王とは幼馴染

セルフィー
幼女と見せかけて単に幼児体型なだけ
ジョセフに恋する自称乙女
一度回復魔術を使えば、超絶スパルタウーマンと化す

スレイブ
戦闘&修行マニア
なんとか魔王をこっちへ引き込もうとしている
普通に強い

マリアンナ
魔界随一の魔術使い
敵であるはずの神を崇拝
いちおう味方

ジョセフ
色々謎な優男
そしてイケメン
女好き

ダンゴ
魔王の部下
一番の理解者兼一番の被害者
本名はルドル・バルト・シュバエルとかいう長ったらしい名前らしい
見た目からダンゴと呼ばれている

勇者
選ばれし者、英雄を約束されし者
そしてヤル気も既に失われし者
布団の中をこよなく愛する者

エレナ
回復術士
女神の如き優しさと寛大さを持ち合わせる聖女
単に天然なだけという噂もちらほら
ファンクラブは星の数ほどあるという

ユーン
女戦士、豪傑豪胆
勇者一行ツッコミ担当
そして勇者一行唯一の常識人

リュー
魔術師担当
おっとりとした口調が特徴
腹黒さは魔族並

ルルリエ

天界の聖天使。マジ天使。
大天使長リヒテルの実の妹
唯一とも言える良識人
魔王一派に圧倒されているが

リヒテル

天界の大天使長
なんか色々考えてるっぽい
めちゃくちゃ強い

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