第6話『魔王、提案する。』

文字数 1,664文字

 それからてんわやんわしながらも、魔王は城にいる仲間を招集する。片や勇者達は突然のラストバトルに困惑しながらも武器を構えた。
 ……が、そこでイシリアが怒鳴る。
城で戦ったりするの禁止!
汚れたり壊したりしたら地の果てまでぶっ飛ばすわよ!?
 ……というわけで、一同はぞろぞろと城の外へと出て行くのであった。
……さっきはごめんね。
なんか紛らわしいことしちゃって……。
いやこっちこそ勝手に勘違いしてたわ。
すまんな。
お二人ともやめい!
いったいどこの世界に謝り合う勇者と魔王がいるんだよ!
いるじゃん。
ここに。
呼吸合い過ぎだなオイ!
いちおう敵同士だからね!?
宿敵同士だからね!?
そういうあんた達も呼吸合い過ぎだっつーの。
あの……そろそろ始めた方がいいのかと……。
同感ですわ。
キリのないことこの上ないですわ。
それにしても、本当に兵士が一人もいないんだねぇ。
ここ本当に魔王城?
ええ。いちおう。
不憫というか何というか……。
敵ながら同情するよ。
でも、毎日賑やかで楽しいですよ?
賑やかというより、やかましい感じですね。
でも、明るい素敵な家ですね。
家というか城だけどね。
魔王の居城だけどね。
勇者ぁぁぁ!
俺が相手だ!
スレイブ!
待ちなさい! ステイ!
ま、まあ敵の数が少なくて済んだのは間違いないね……うん……。
数はさほど差がありませんので、重要なのはチームの連携になってきますね。
……魔王様?
聞きましたか?
ああ……。
まさか、僕達相手にチーム戦を挑むつもりだとはね……。
自信あり……ってところかな?
いや全然。
超ヤバい。
どうしよう。
我らのチーム力など皆無ですからね。
チーム戦をするくらいなら一人で相手した方が何倍も楽ですわ。
わ、私の中の魔王像が崩れていく……。
物凄い勢いで……。
気をしっかりユーン!
頑張って!
提案!
各個撃破的な形式でお願いします!
じゃないとヤベーです!
はん!
こっちが断然有利なのに、誰が個人戦なんて……!
おっけー。
いいよー。
認めるのかよ!
いやおかしいって!
まあいいんじゃない?
ごちゃごちゃした乱戦になるよりは戦いやすいだろうし。
そうですね。
相手に魔王の守りを固められては厄介ですし……。
みんな!
ケガしないように気を付けてね!
めんどくさいですわ。
あなた、一人で頑張ってくださいませ。
元はと言えば、あんたが兵を解散させたのが悪いんだし。
責任取りなさいよ。
ふぇぇえん……。
守る気、ないみたいだね……。
え、ええっと……。
とりあえず、私は静観させてもらうわ。
勝とうが負けようがどっちでもいいし。
僕はここでみなさんを応援してますよ。
わ、私は……ええと……。
ああ、ルルリエちゃんはそこでゆっくりしててよ。
巻き込まれないように気を付けてね。
は、はい……!
魔王さんもお気をつけて……。
勇者とは俺が……!
……と言いたいところだが。
――おい! 女!
ん? アタシ?
お前剣士だな?
一つ俺と死合えや!
……いいよ。
やったろうじゃん。
あれま。
スレイブさん、珍しくまともですね。
たぶん強そうな剣士だから、血が騒いでるんじゃないかなぁ。
僕のお相手は、誰かな?
では私が。
あなたはマナが高そうですし。
一宿一飯の恩……なんて言うつもりはサラサラないけど?
はい。
けっこうです。
でしたら、私は……。
……あなたから感じますわ。
乙女力を……。
乙女力……ですか?
ええそうですわ。
……少し、よろしくて?
……はい。
ってことで、僕はやっぱり君だよね、勇者くん。
そうだなー。
そうだろうなー。
対戦カードは決まりましたな。
各々方、奮闘をお祈りいたしますぞ。
ほんじゃ、始めようかね。
……マリアンナさん、よろしく。
はい。わかりました。
 するとマリアンナは精神を集中させた。
 そして呪文を唱えると、それぞれの体は光に包まれ、飛散した。
これは、移動魔法ですね。
それぞれの組が四方に跳びましたな。
みなさん、大丈夫でしょうか……。
大丈夫でしょう。
みなさん、それなりにお強いですし。
ともかく、早く済ませて欲しいわね。
じゃんけんで勝負してくれないかしら。
 ついに魔王達と勇者達は激突する。
 果たして、軍配はどちらに……。
 続く。
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登場人物紹介

魔王
若くして魔界を統べた英雄的新米魔王
めちゃくちゃ強いが、苦労人
ツッコむつもりもないのにツッコまざるをえない部下を多数持つ

イシリア
魔王の城のメイドさん
意外と真面目
魔王とは幼馴染

セルフィー
幼女と見せかけて単に幼児体型なだけ
ジョセフに恋する自称乙女
一度回復魔術を使えば、超絶スパルタウーマンと化す

スレイブ
戦闘&修行マニア
なんとか魔王をこっちへ引き込もうとしている
普通に強い

マリアンナ
魔界随一の魔術使い
敵であるはずの神を崇拝
いちおう味方

ジョセフ
色々謎な優男
そしてイケメン
女好き

ダンゴ
魔王の部下
一番の理解者兼一番の被害者
本名はルドル・バルト・シュバエルとかいう長ったらしい名前らしい
見た目からダンゴと呼ばれている

勇者
選ばれし者、英雄を約束されし者
そしてヤル気も既に失われし者
布団の中をこよなく愛する者

エレナ
回復術士
女神の如き優しさと寛大さを持ち合わせる聖女
単に天然なだけという噂もちらほら
ファンクラブは星の数ほどあるという

ユーン
女戦士、豪傑豪胆
勇者一行ツッコミ担当
そして勇者一行唯一の常識人

リュー
魔術師担当
おっとりとした口調が特徴
腹黒さは魔族並

ルルリエ

天界の聖天使。マジ天使。
大天使長リヒテルの実の妹
唯一とも言える良識人
魔王一派に圧倒されているが

リヒテル

天界の大天使長
なんか色々考えてるっぽい
めちゃくちゃ強い

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