第6話『魔王、蹴られる。』
文字数 2,837文字
――さて魔王の居城。
いつものような毎日と見せかけて、何やら起こっているようです。
一時間後、門前。
そして二人は、城を後にした。
――げしっ!
そのままセルフィーは、怒り心頭といった様子で去って行った。
残された魔王は、その後姿を恐る恐る見送る。
ダンゴもまた、怒りながら去っていく。
一人になった魔王は、一度溜め息を吐き天井を見つめた。
様々な想いが渦巻く城。
そこを後にしたイシリアとジョセフは、一路とある街へと向かう。
魔界と人間界の狭間にあるその町には、多種多様な種族が往来し活気にあふれていた。
彼らに人間も魔族も関係はない。売れるか売れないか。買えるか買えないのか。その点にしか興味がないのである。
そこへ行けば大抵の物が手に入ることも大きい。兵器から今日のご飯のおかずまで、様々なものが売られている。
――ブラックマーケット。その街は、まさにその名にふさわしいとも言える。
二人は街の中を歩く。行き交う人々の間を抜けて、大きな荷物を引っ提げて。会話もなく。
やがて二人は露店街を抜け出し、街の外れへと辿り着く。先ほどの大通りとは打って変わり、そこにはほとんど人の姿はなかった。
見ればイシリアの表情は冴えない。その理由を知ってか知らずか、ジョセフは不意に口を開いた。
まあ、案の定ひーひー言っちゃってるけどさ。でも少なくとも、みんな思ってるんじゃないかな。前よりもずっとマシになったって。魔界が好きになったって。
だからこそ、セルフィーにマリアンナ、スレイブにダンゴ……そして私も、今あの城にいるんだと思う。
その時、イシリアの耳に何かが聞こえる。
殺した足音。擦るような砂の音。
彼女の言葉を待っていたかのように、建物の影から怪しげな男達が出て来た。その数は多く、瞬く間にイシリア達は男達に囲まれてしまった。
そしてイシリア達は、賊に従い街の郊外へと連れ去られていった。
意外と余裕の様子で……。