第5話『魔王、視察する。②』
文字数 2,444文字
――庭園。
ガヤガヤと騒いでいる魔王達の元に、ふと誰かが近付いてきた。
――城エントランス。
そうこうしていると、通路の奥からジョセフが歩いてきた。
そして一行は食堂へと向かう。
その途中、魔王は頭に靄がかかっている気分であった。
一方その頃、魔界と人間界のちょうど境界付近の荒野では……。
スレイブは、どこにいるかもわからない勇者を探し続けていた……。
ところ変わり、魔界に近い人間界の中の森。
うっそうとした緑が生い茂り、視界を隠す。人の気配すらもなく、葉が擦れる音と鳥が飛び立つ音だけが響き、辺りには薄気味悪い雰囲気が広がる。
その中に、静かに佇む一つの木造りの小屋があった。
そこまで大きくはない。屋根は割れ、つたが壁を這い、一目でしばらく人が寄りついていないであろうことが分かる。中に木片や斧が無造作に置かれているところから、かつては倉庫として使われていたようだ。
そして、その中では――。
――……で? 首尾の方はどうだ?
まあそれほどでもあるがな。感謝しろよ?
後始末は全部親父がやってくれるからよ。俺達は、ただ殺せばいいだけだ。
任せとけって。だが、一つだけ言っておく。
英雄になるのは、俺だ。お前らじゃない。もちろん褒美は弾むから、安心しろ。
――……そう。俺は英雄になるんだよ。
そんで掴むんだよ。富も、名声も、女も。なんでも思い通りのままだ。
――不穏な空気が、漂っていた……。