ロミオとジュリエット~未来版~
文字数 4,726文字
暗く長い廊下を、手を取り合って逃げる若い男女がいた。
カッカッカッカッ・・・・
はあ、はあ、はぁ・・・
「
若い女性が言った、よく見ると女学生のようだ、制服を着ていたから。
「ぼくにもわからないんだ、
若い男性が言った、こちらも学生のようだ、きっと同級生なのだろう。
「はあっ、はあっ・・いったい、どうして・・こんなことに・・・はあっ・・」
走り続ける長い廊下を見据え、呂美夫と呼ばれた学生は
~ロミオとジュリエット【未来版】~
登場人物
◆
大手酒造メーカーの息子 モンタギュー(酒造)社〔お酒と合うステーキ店、焼肉チェーンも展開中〕
◆
大手豆腐&納豆、食品メーカーの娘 キャブレット(食品)社〔健康食品ブームで海外にも進出中〕
◆門田牛家のお父さん
強くて怖い、体も牛のように大きい、モンタギュー社の社長〔社内に敵も多い〕
ー社長室ー
コンコン・・ガチャ・・
「失礼します、社長、緊急事態です!」
青ざめた専務がいきなり入ってきた、彼はまだ若いが有能な専務である。
執務机で書類を読んでいた門田牛社長は顔を上げる。
「何事だね、そんなにあわてて?」
「30分ほど前、若い学生のカップルが受付に来て、社長に会わせてください、と言ってきたんです」
「受付が、アポイントがなければ会えません、と言っても「そこをなんとか」「ほんの少しの時間で良いから」と男子学生が言って押し問答が起きまして・・」
「それで?」
「受付は、では保安上のため少し離れた位置にある、セキュリティゲートをくぐってください、と促して、2人がゲートに近づいたところ・・・
「いきなり赤ランプが明滅し、サイレンが鳴り響き、最大級の警告をゲートは出したんです」
「それは、どういうことだ?」
「はい、規定に従い、警備員がその二人を確保しようとしたら・・二人は逃げました、ビル内に・・」
「なにい、外じゃなくビル内(社内)にか?」
「はい、警報はレッドアラート、A級保菌者警戒警報でした」
わなわなと震える門田牛社長
「キ、キャリアー(保菌者)だとう!!」
「はい、ほぼ確実だと・・・」
天を仰ぐ社長
「なんということだ!キャリアに侵入されるとは、しかも本社に・・・緊急事態だ、直ちに厳戒態勢を引け」
「了解」専務は社長室の壁にある、小さなガラス扉を開け「警」と書かれた赤いボタンを押す、たちまち警報音が社内中に鳴り響く。
ウーガ、ウーガ、警戒、警戒・・・
『ハザードレベル4が発令されました、保菌者が侵入しました、各セクションの保安要員は直ちに武装し、戦闘配置についてください・・・警戒、警戒、ハザードレベル4が・・
ゴウン、ゴウンと閉じるシャッター
専務「保安部、社長室へ回線を回してくれ」直通電話で保安部に連絡する専務、同時に天井から大きなモニターが降りてくる、ここに保安部と同じ映像が映るのだ、同時通信もできる。
保安部「
専務「これは・・?」
社長「アレに向かっているのか?」何かに恐れている社長と専務
社長「脅威を
保安部「了解」「アンノウン敵Aに大量の納豆菌が確認されました」
社長・専務「やっぱりか!」
保安部「アンノウンはB2からB3へ移動中・・」
社長「まずい、
専務「社長、それでは麹も焼かれてしまいます」
社長「ぐぬぬ・・」
専務「テーザー銃を使いましょう、それなら焼けませんから」
社長「これはわが社の存亡にかかわる事態だ!麹菌が全滅したら、わが社は終わりだ!バイオハザードだ、ご先祖さまに申しわけが立たない」
頭を抱える門田牛社長
走り疲れて、暗い廊下の一つの部屋の前で休んでいる二人
「ごめんね樹里江さん、父さんに僕たちがつきあってることを認めてもらおうとして、本社まで来たけど・・こんなことになってしまって」
「わたしは家に行ってもよかったのに?」
「父さんは日曜日も家に帰って来ないんだ、最近は海外視察も多く、いつ帰るかもわからない、唯一今日だけは、必ず会社にいることがわかったから、来てみたんだけど・・」
「しかたがないわ、次の機会にしましょう」
「コソコソ会うのは、もうイヤなんだ!キミだって、遅れて帰る理由がもうないだろう?」
「・・・・」その通りだった
話し合う二人の姿は、近くの天井カメラがとらえていた。
ー社長室-
「映像来ました・・こ、これは?ご子息・・ではありませんか?」驚く専務
同映像を凝視している社長、こぶしを握りしめ・・
「ろ・・呂美夫、何をやっとるんだ!あのバカは!」(ダンッと机を叩く)
「隣にいる女の子はひょっとして?」
「ああ、キャブレット食品社 CEOの娘だ、キャブレット家だ」
怒りに震える門田牛社長
(キャブレットの小娘に、たぶらかされおったかー!!)
・・ザッザッザッ・・・大量の警備部隊が地下へと向かう
足音が近づいてくる、音からして多人数の部隊のようだ、もうダメか?
絶望する呂美夫の目の前の扉には、パスワード入力機器と富士山のイラストが貼ってあった。
(富士山の絵がどうして?)考え込む呂美夫
その姿を廊下のカメラで、やや上から見ている社長
「ふふふ・・もう逃げられないぞ呂美夫」
ピポパポ...「3776」(あっさり開ける呂美夫)
「な、なんで4桁のパスワードで開けられるんだ?」
「そんなヒントを出してどうするんです」
「いや、わしが忘れないようにと秘密のヒントを・・(汗)」
「秘密になってないじゃないですか」
(・・ったく20、いや40年前の小学生クイズみたいなパスワードだな)
普通のオフィスだが、使われていないようにも見えた、その奥には、大きな厳重そうなカプセル型の部屋があった、その部屋の扉にもパスワード入力機器が付いていた。
「樹里江さん、この核シェルターみたいな部屋へ逃げ込もう・・んっ、またパスワードか?」
パスワードを押す機器の横には、門田牛社長の写真と幼稚園児が誕生日会に貼るケーキの絵を切り抜いた紙が貼ってあった」
「ふふふ・・これはわかるまい」
ピポパポ...「20〷 0818」(またもや、あっさり扉を開ける呂美夫)
「わ、わしの誕生日をどうして?」
「いちばん設定しちゃいけない番号でしょうがあぁ~」
(なにを考えているんだ、この社長は)
「
社長室のスピーカーに保安部からの報告が聞こえた。
「そ、そんなバナナ・・」
(オヤジギャグ炸裂だ、どうして破られるのかがわかったよ)あきれる専務
「止めろ!絶対に止めろ!麹蓋の先は
「この先は、指紋、虹彩パターン認証です、もう進めませんよ」
「もうよい、わしが行く、準備をしろ」
「はい」
ー麹蓋ルームへつづく部屋-
ドカンッ!!と扉が蹴り破られ、楯を持った警備員たちがドヤドヤと流れ込んできた。
突然のことに驚く2人、呂美夫は樹里江の前に出て、かばう。
警備員たちは列を作り、ドア部を挟んで対峙した、すると、どこからか白いスモークが部屋の中に漂い、視界を悪くした。
ジャンジャンジャン、ジャジャじゃーん・・・ジャジャ・・・
突然BGMが響き渡る、開けはなたれたドアから、大きな黒い男が現れた、
黒い武将のようなフルフェイスマスク、膝までかかる黒いマントを着た、どこかの映画で観たような・・
「・・シュゴー・・パー、シュゴゴォォ・・パー」呼吸音だろうか?やたら音が大きい気がする。そして黒武将はくぐもった声で言った。
親父「せがれよ・・」
驚く呂美夫、この喋り方は?
「と、父さん・・父さんなの?その恰好は、なに」
「これは外の雑菌を
シュゴゴー・・・シュパー・・
しかし、黒い武者が指さす先の呂美夫は、かばう樹里江から離れようとはしない
「ウ、ウソだ!父さんはそんなコスプレの人ではない、きっと樹里江さんとの交際も認めてくれるはずだ」
「アホか!そんなこと認めるか!その子はキャブレット家の娘なんだぞ(コスプレって何じゃ?)」
「家なんか関係ない、僕たちは愛し合っているんです!」
「なに甘いことをほざきおる?、お前にはミスコンレベルのもっと家柄の良い娘をいいなずけにしてやるから、その子はあきらめろ!お前は会社の跡取りなんだぞ!」
「いやだ!ボクは樹里江さんと・・・ガッ・・ツ・・」呂美夫はすべてを言うことはできなかった。
呂美夫の背中から横には線が伸び、その先にはテーザー銃を手にした専務が、無表情に立っていた。
「ふうっ、手間をかけさせおって、二人とも連れてゆけ!」
警備隊に指示する社長、連れてゆかれる二人、呂美夫は気を失っている。
「まったく・・せめて酒屋の娘なら許したのに」
こうして愛する二人は引き裂かれてしまった。
第一部完
そうなのか?納豆菌は最強の菌と呼ばれ、100度の温度でも死滅せず、汚染された水でも瞬く間に浄化してしまう「チートすぎる菌」なんだ、万が一他の菌がある培養室へ入ってしまうと、その
だから未来もきっとそうなのだろう。しかーし、その困難にもめげずに愛を貫く男女を主人公にした純愛大作ドラマ作品だ、これは少女マンガの原作としてもハー〇クイン小説としても、泣ける受けること間違いなしの100万部、愛の名作となるはずだ(メイビ―)
愛してはならない相手を愛してしまった、さらに家同士も仲が悪い、乗り越える壁は高く、親父さんは大激怒。これこそまさに王道であり、鉄板であり、定石である。
こういった話はどんな時代でもベストセラーになるものだよ
これは名前の「ロミオ」と「ジュリエット」を変えても通じる、他にも「リア王」「真夏の夜の夢」だって同じだ、さらにシェイクスピア話のエッセンスだけを抽出し、舞台と主人公を、現代や未来に変えても伝わるということだ、鉄板とはそういうものだ、現代のマンガや小説にも困難を乗り越えるカップルとか、似たようなストーリーはゴマンとあるだろ。わからないように書く、とはそういう意味でもあるんだよ
どたあぁぁ(イスごと倒れる直さん)