第34話 勇気って何だろう?

文字数 1,419文字

 この日、ぽーは雪で()(しろ)になった山の(うえ)を飛んでいました。

「わぁ……、キレイだなあ」
 ぽーは、自分(じぶん)の体と同じ白色が大好(だいす)きです。


 そして、しばらく飛んでいると、たくさんの人がカラフルな(いた)を足につけて、山の上の方から(すべ)って()りていました。

「何やってるんだろう? なんだか楽しそうだぞ」

 ぽーは、しばらく見ていましたが、やがてみんなと一緒(いっしょ)に山の上から下り(はじ)めました。


「ひゃっほーい♪」


 ……すると、山の上で男の子が二人、話をしていました。
「たけし、お前スノーボード上手(うま)くなったなあ。全然(ぜんぜん)()いつけないわ」
「ふふふ、そうでもないよ」

「そっかあ、スノーボードって言うんだな、この(あそ)び」


 そしてぽーは、またみんなと山の上から下へ飛んでいきました。

「わーい、わーい。競争(きょうそう)だあ!」


 下まで来ると、足に板を付けた小さな男の子がぽーの目の前で、(ころ)んでいました。

 
 すってんころりん


「イタタた、よし、もう一度」


 すってんころりん


「ダメだ。できないよ。たけし兄ちゃん、手伝(てつだ)ってよ」

「あ……っ、さっきのスノーボードが上手(じょうず)な子だ」

「そんな簡単(かんたん)には、できるようにならないよ。スノーボードは、地道(じみち)練習(れんしゅう)勇気(ゆうき)大事(だいじ)

「う、うん」

 さとる君は、たけし君の話している意味(いみ)があまり分かっていないようです。


「さとる君、がんばれー」

 すってんころりん

「いたた……」


 ぽーは、しばらく(よこ)でさとる君を応援(おうえん)していましたが、なかなか(すべ)れるようになりません。

「うーん、(むず)しいなあ。どうすればいいか、分かんないな」

 すってんころりん

「もっとスピードを出さないから、(ころ)んじゃうんだよ」

 たけし君も、しばらくはさとる君に(おし)えていましたが、自分も(すべ)りたくてウズウズしてきました。

「――じゃあ、ちょっと(すべ)って来るからがんばれよ」

「えー、兄ちゃん……」
 さとる君は、(さび)しそうな声でたけし君を()びましたが、行ってしまいました。


「むずかしいなあ。さっきたけし君は、地道(じみち)練習(れんしゅう)勇気(ゆうき)って言ってたなぁ。地道(じみち)練習(れんしゅう)って『しゅぎょう』の事だよね。……勇気(ゆうき)ってなんだろうな」

 そうして、ぽーがさとる君の(すべ)っているのをじっと見ていると……、さとる君は、(すべ)り始めてスピードが(はや)くなると(ころ)んでいました。

「ん? あのころび方は……、そうかあ!」

 ぽーは、さとる君が(ころ)んでしまうのは、スピードが(はや)くなると(こわ)くて()まってしまい、それで(ころ)んでいる事に気づきました。

「こわくても止まらない『勇気(ゆうき)』が必要(ひつよう)なんだな」


「さとる君、今から押すけど頑張(がんば)ってね。何かあってもしっかりボクが()めてあげるからね」
 
 ぽーは、さとる君のすぐ(うし)ろにいきました。

「あわわわ」

 さとる君は、(こわ)くて()まろうとしました。
 そこで、ぽーがポンっと背中(せなか)()してあげます。

「あっ」

 すると、さとる君はそのままスピードを上げて(すす)んでしまいました。

「わああ……!」


「ん?」


 さとる君が、かなり(さき)まで(すべ)ってから、ぽーがこっそり止めてあげました。

「そうか! ここで止まるのを我慢(がまん)すればいいんだな」

 さとる君は、何かコツをつかんだようです。

 それから、さとる君はさっきより楽しそうに練習(れんしゅう)を始めました。楽しく練習(れんしゅう)できるようになれば上手(うま)くなるのはあっという()です。


「わーい、楽しいなあ。早く兄ちゃん来ないかな」

「良かったね、さとる君」


 カローン♪、コローン♪という(鐘かね)》の(おと)が雲の上にある教会(きょうかい)から()(ひび)いています。


「さて帰ろう♪」

 ぽーは今日(きょう)勇気(ゆうき)使(つか)(かた)を少し分かった気がしました。

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