第1話 冒険の始まり

文字数 1,137文字

 今日もおばけの男の子、ぽーの()む雲と雲の(あいだ)から大きな太陽(たいよう)が上がってきました。

「ぽー……、ぽーや」

 …… ……

「ぽーや、おい、ぽー」

「……ん? ママ?」

「おはよう、ぽー」

「んん……ん、おはよう、じいちゃん」

「ぐっすり、ねむれたかい?」

「う、うん」
 ぽーは目をこすりながら、うなずいています。

「わしは、これからワポの(はたけ)に水をやりに行くからな。そこにパンを()いといたから、あとで()べなさい」
「うん、ありがとう、じいちゃん」

 キョロ キョロ

「あれ………? ママは?」
「ママは、さっき出かけたぞ」
「どこに行ったの?」
「雲の階段(かいだん)をおりて、下の世界(せかい)に行ったんじゃ」
「下のせかい?」
「そう、下の世界(せかい)。そこの(とびら)()けて、階段(かいだん)をおりていくとこじゃ」
 ハルじいさんはそう言って、雲の上に()かぶ木の(とびら)をさしました。

「へぇ……、たのしそう」
 ぽーは、下の世界(せかい)へ行ってみたくなりました。


(そろそろ、ぽーも下の世界(せかい)を見るときが来たようじゃの……)


 (つぎ)の日……
「ママ、(かえ)ってこないな。ねえ、じいちゃん」
「ん? どうした、ぽー」

「ママをさがしに行きたい! 雲のかいだんをおりてもいい?」

「ふむ……、ぽーや。では、これからわしが言うことを、約束(やくそく)できれば行ってもよいぞ」
「やくそく? うん、やくそくする!」
「ぽーには、ママと(おな)能力(のうりょく)がある」

「のうりょく?」

「そう、能力(のうりょく)。ぽーは『(さわ)りたい!』と(つよ)く思えば、(もの)(さわ)ることができるのじゃ」
「へぇ……、なんだかたのしそうだね」
 ぽーは、ワクワクしてきました。

「ただし! (さわ)るたびに、ぽーはどんどん小さくなってしまう」
「小さくなっちゃうと、どうなるの?」
「やがて、()えてなくなってしまうんじゃ」
「うわぁ、こわい」
 ぽーは、ブルブルふるえています。

「だから、これから(はな)す、三つの約束(やくそく)をまもっておくれ」
「うん」


「まず一つ目、たくさん何回(なんかい)(さわ)らないこと。(さわ)りたくなっても、なるべくがまんするんじゃぞ」

「二つ目、(さわ)っていると小さくなってしまうから、(さわ)るのは(すこ)しの(あいだ)にすること」

「そして、三つ目は、おやつの時間(じかん)には家に(かえ)ってきて、ワポの実を()べること」


「この三つ、わかったかい?」

「わかった! じいちゃん、やくそくする」
「よしよし、では雲の階段(かいだん)への(とびら)()けてあげよう」

「やったぁ♪」

 ハルじいさんは、大きな(かぎ)をもってきて、雲の階段(かいだん)(とびら)()けました。


 ギッギッギー


「ふむ、では気をつけて行っておいで」
 ハルじいさんは、ニッコリ(わら)って手をふっています。
「行ってくるね、じいちゃん。雲の下のせかいって、どうなってるんだろう? ワクワク」

 ぽーは、風船(ふうせん)のような丸くて白い(からだ)をぴょんぴょん()ねながら、うれしそうに階段(かいだん)をおりていきました。


 さあ、おばけの男の子、ぽーの小さな冒険(ぼうけん)(はじ)まりです。

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