第１５話　ママをさがしに

　そういえば、コロがママの匂(にお)いがついてる物(もの)があれば、ママを探(さが)せるかもって言ってたな……。

　ある朝(あさ)、ぽーは朝(あさ)ごはんを食(た)べている時(とき)にハルじいさんにたずねました。
　
「ねえ、じいちゃん」
「うん、なんだい？」
「ママのにおいがついている物(もの)って、なんかない？」
「ん？　どうしてそんな物(もの)がいるんだい？」
「コロが、それがあるとママを探(さが)せるかもって言ってたの」
「犬のコロ君か。犬は『嗅覚(きゅうかく)』がすぐれておるからな」
「きゅうかく？」
「うん、そうじゃ。鼻で匂(にお)いを嗅(か)ぐのが犬は得意(とくい)なんじゃ。匂(にお)いを覚(おぼ)えたり、遠(とお)くまで匂(にお)いを嗅(か)げたりな」
「へえ……、すごいね」
「ふむ、ちょっと待(ま)ってなさい」
　そういうと、ハルじいさんは家の裏(うら)の倉庫(そうこ)に行きました。


　……そして、しばらくすると、まっ白なハンカチを持(も)ってきました。
「これを持(も)っていくがよい。これは雲の上でも下にいっても持(も)つことができるハンカチでな、ママが使(つか)っていた物(もの)じゃ」
「ありがとう、じいちゃん。じゃあ、行ってくるね」

　ぽーは、うれしそうに雲の階段(かいだん)をおりていきました。
「気をつけるんじゃぞ」
「はぁい♪」


(そろそろ、ぽーには話(はな)さなければいけないかな……)
　階段(かいだん)をおりていくぽーを見ながら、ハルじいさんはポツリと言いました。


　そして、ぽーはコロの家にむかっています。


　コロは、今日(きょう)も退屈(たいくつ)そうにしていました。

「おーい、コロ」
「わんわん♪」
　コロは、ぽーを見るとうれしそうに、しっぽをフリフリしています。

「こないだ、ママのにおいがついた物(もの)をもってきたら、ママをさがせるかもって言ってたよね」
「わん」
「これをもってきたけど、どうかな？」
　ぽーはそう言うと、白いハンカチをコロに見せました。
「わわん」
「においをかがせろ？　うん、分(わ)かった」
　ぽーはハンカチをコロの黒い鼻(はな)に近(ちか)づけます。

　コロはクンクンと匂(にお)いを嗅(か)いでいます。そして、少(すこ)し考(かんが)えてから「わ、わん、わん」と言いました。

「首輪(くびわ)をはずすんだね。分(わ)かった」
　ぽーはコロの首輪(くびわ)のボタンをパチンとはずしました。
「わんわん」
　コロは走(はし)りだしました。

　そうして、ぽーとコロは仲良(なかよ)く並(なら)んで走(はし)っていきます。

　
　……そして、かなり遠(とお)くまで来ました。
「今日(きょう)は、あすかちゃんは学校(がっこう)？」
「わん、わわん」
「そっか、学校(がっこう)か。じゃあ、夕方(ゆうがた)にはかえらないとね」
「わん」

　すると、突然(とつぜん)コロが立(た)ち止(ど)まりました。
「ん……？　どうしたの、コロ」
「わんわん、わん」
「え……っ、このあたりでママの匂(にお)いがするの？」
　ぽーは、まわりを見渡(わた)します。ここは、大きな公園(こうえん)の芝生(しばふ)の上。

「ママー、ママー」

　ぽーは、大きな声でママを呼(よ)びながら、公園(こうえん)のまわりを飛んでいます。
　その間(あいだ)、コロは鼻(はな)をクンクンしながら、あたりを調(しら)べていました。

「わん、わん」
　そして、コロは公園(こうえん)を出ていきました。
　ぽーは、コロの後(あと)を追(お)いかけます。


　……しばらく行くと、ぽーとコロは白くて四角い形(かたち)をした家につきました。

　すると、コロはぽーを見て「わん」と言いました。

「ここから、ママの匂(にお)いがするんだね」
「わわん」

　しかし、ぽーとコロが家のまわりを調(しら)べましたが、いくら探(さが)してもママはいませんでした。


「だれも、いないみたいだね、コロ」
「くうーん」

　空の太陽(たいよう)が沈(しず)み始(はじ)めています。
「もうすぐ、あすかちゃん帰(かえ)ってきちゃうね。ここまでにしょう。今日(きょう)はありがとうね、コロ」
「わん」


　こうして、コロのおかげで、ママの匂(にお)いがする場所(ばしょ)が見つかりました。