第6話 たましいの泉

文字数 1,676文字

 ハルじいさんは、ぽーを()きかかえながら、(たましい)(いずみ)にむけて飛んでいました。

「ねえ、じいちゃん」
 ハルじいさんにぽーがたずねました。

「ん? なんじゃ」
「さっきのちょうろうさんの家にいた、白い(とり)ってなぁに?」
「あれは、伝書(でんしょ)バトって言うてな、長老(ちょうろう)さんや、えらい人の家にいる(とり)じゃ」
「えらい人しか、かえないの?」
「そうじゃな、えらい人たちの連絡用(れんらくよう)だからな」
「へえ……、そっか。ぽーもほしいな」
「じゃあ、えらくならないとな」
「うん、がんばって、えらくなる!」
「うんうん」
 ハルじいさんは、うれしそうにうなずいています。

 そして、ハルじいさんとぽーは、大きな(みずうみ)の上を飛んでいます。
「……ところで、たましいのいずみって、なに?」
富士山(ふじさん)という、大きな山の一番(いちばん)(たか)場所(ばしょ)の雲にある(いずみ)じゃな」
「ふぅーん」
「そこに、富士山(ふじさん)の水が()き出ているのじゃ」
「へえ……、(たの)しそうだなあ、バシャバシャできる?」
「これこれ、神聖(しんせい)な水だから、(あそ)んじゃだめだぞ」
「うん、わかった」
「その水を()むと、ぽーは(もと)(もど)ることができるのじゃ」
「そっか、よかったぁ」
 ぽーはホッとしています。 

「ただな……、まあ、これから先はついてから、ゆっくり(はな)そうかね。さて、()いたぞ」
「わあ、大きいね、この山」
「ぽーが()んでいる日本の中で、一番(いちばん)大きな山じゃ」

 ぽーが下を見ると、大人(おとな)たちが山を(のぼ)っています。
「山をのぼってる人がいるよ。たいへんそうだね」
「そうじゃな」
「なんで、あんなにがんばってるんだろう……? わかった! 前にじいちゃんがおしえてくれた『しゅぎょう』してんだね」
「あっはは。あれは修行(しゅぎょう)ではないぞ、ぽー」
「そうなの? じゃあなんで、あんなにがんばって山にのぼってるの?」
「そうじゃな……、達成感(たっせいかん)かな」
「たっせいかん?」
「ふむ……ぽーにはまだ、ちょっとむずかしいか。ぽーも(なに)()いことをしたとき、うれしいじゃろ」
「うん」
「それと(おな)じで、苦労(くろう)して山を(のぼ)()えると『うれしい』って、気持(きも)ちになるのじゃ、大人(おとな)はな」
「ふぅーん、そっか。おとなはたいへんだね、うれしくなるために、がんばらなくちゃいけないなんて」
「あっははは、そうじゃな。ぽーもいずれ分かるじゃろ。苦労(くろう)すれば、それだけうれしさも大きくなるのじゃ」


 こうして、ハルじいさんとぽーは、(たましい)(いずみ)のある雲に行くための、白い階段(かいだん)の前につきました。そこには、ガッシリとした(からだ)の大きな門番(もんばん)が立っています。
「ハルじいじゃ。長老(ちょうろう)さんから聞いてるかね」
「うかがっております。どうぞ」
 そういうと、門番(もんばん)(もん)()けました。

 ギギギッツ

「では、お気をつけて」
「ありがとうな」
 門番(もんばん)は、ぽーを見るとニコッと(わら)って手をふってくれました。ぽーも、門番(もんばん)に手をふります。
「ありがとう、門番(もんばん)のおにいさん」


 そして、ハルじいさんとぽーは(もん)の中へと入っていきました。

「いいかい、ぽー」
「うん、なに? じいちゃん」
(いずみ)の水を()むのは、今回(こんかい)だけじゃぞ」
「うん、()かった。……でも、どうして?」
「ここの水を()むと『(とし)』をとってしまうのじゃ」
「とし?」
「そう。(とし)をとるとぽーのだいじな『子供(こども)(こころ)』がなくなってしまうのじゃ」
「ふーん、そっか……。()かったよ、じいちゃん」


 そして、雲で出来(でき)た白い階段(かいだん)を上っていくと、(たましい)(いずみ)につきました。

「うわぁ、きれいないずみ……」

 水は()(わた)り、(およ)いでいる(さかな)も見える青い(いずみ)(さかな)もぽーが見たこともないような、赤や青や金色(きんいろ)(めずら)しい(もの)ばかりです。
 ハルじいさんは、長老(ちょうろう)から()りた木で出来(でき)柄杓(ひしゃく)(いずみ)の水をすくい、その水をぽーに()ませました。

 ごくっ、ごくっ

「おいしい! もういっぱい」

「こりゃ、こりゃ、だめじゃと言ったろう」
「そっか。えへへ」


 すると……、ぽーの(からだ)(いずみ)の水のように青く光りだして…………(もと)の大きさに(もど)りました。

「やったぁ、もどった、もどった」
 ぽーは、ぴょんぴょん飛びはねて大喜(おおよろこ)びです。

「よし、よし。では、(かえ)るかね」
 ハルじいさんも、ホッと一安心(ひとあんしん)です。



「おばけのカフェで、なんかおいしいものでも食べて(かえ)ろうか、ぽー」

「やったぁ♪ せきらん(うん)ソフトたべよっと」

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