第30話 雲の上のサンタさん

文字数 2,408文字

 ※このお(はなし)は、サンタクロースを(しん)じているお子様(こさま)とは()まないでください。


 この日、ぽーたちの()んでいる雲が、下の世界(せかい)にたくさんの(ゆき)()らせています。


「ねえ、ねえ、じいちゃん。サンタさんって、ぽーのおうちには来てくれるのかな?」
 ぽーはクリスマスの絵本(えほん)を読みながら、ハルじいさんにたずねました。

「ああ、きっと来てくれるじゃろ」

「そっかあ。はやくこないかなあ」

「ぽーが()ている(あいだ)に、ひとっとびでやってくるじゃろ」

「ん? この絵本(えほん)だと、とんでるのはトナカイさんだけど、サンタさんもとべるの?」

 ぽーはそう言うと、ハルじいさんに絵本(えほん)を見せました。そこには、サンタさんとたくさんのプレゼントを()んだソリを、2匹のトナカイが()っぱって飛んでいく絵が()いてあります。

「あっ、そっ、そうじゃった。トナカイじゃったな、飛べるのは。あはは」
 ハルじいさんは、(あわ)てた様子(ようす)でぽーに言いました。



 その日の(ばん)、ぽーがぐっすり(ねむ)っているのを(たし)かめると、ハルじいさんはこっそり長老(ちょうろう)の家に()かいました。


 トントン……トントン

 「はい、どなたでしょうか?」
 ハルじいさんが、長老(ちょうろう)の家の(とびら)(たた)くと、中から門番(もんばん)の声が聞こえてきました。

「ハルじいじゃ」

長老様(ちょうろうさま)がお()ちでございます」
 門番(もんばん)がそう言うと、(とびら)(しず)かに(ひら)き始めました。

 ギッ ギッ ギ―

 ハルじいさんは、門番(もんばん)(れい)を言うと、長老(ちょうろう)の家に入っていきました。


 長老(ちょうろう)の家の前には、長老(ちょうろう)の他に3人のおじさんがいました。

()たせてすまんの。今日(きょう)は、ぽーがなかなか()んかった」

「いやいや、ハルじいさんとこは、しょうがないぞ。子は(たから)じゃからな」
 
「うん、うん」
 

「それでじゃ。今年のクリスマスじゃが……」
 長老(ちょうろう)は、口元(くちもと)()えた白くて(なが)いひげを(さわ)りながら言いました。

「ここにいる、ケンさん、マサさん、テツさんが、サンタさんじゃ」

「ふむふむ、よろしくの」
 ハルじいさんは頭を下げました。

「今年は、プレゼントを奮発(ふんぱつ)したからの。子供(こども)たちも(よろこ)ぶぞ」
 長老(ちょうろう)は、倉庫(そうこ)の前にある大きな(ふくろ)を見ながら言いました。

「おお、それはありがたいの」
 ハルじいさんは、大きな袋を見て(よろこ)んでいます。

 今年は、ハルじいさんの家の(となり)に、はやと君という新しい子が()んでるから(わす)れんようにな」
 長老(ちょうろう)はケンさん、マサさん、テツさんを見ながら言いました。


「はい、分かりました」


      * * * * * 


 そして、クリスマスの前日(ぜんじつ)……


 ぽーは木の妖精(ようせい)と話をするため、山の近くに来ていました。今日(きょう)は雪が()って(あた)りは()(しろ)です。

「ねえ、ねえ、木の妖精(ようせい)さん」

「うん、なんじゃ?」

「なんか、おじいさんみたいな、まっしろな(あたま)になってるよ」

「雪は(おも)たくてかなわんわい。あはは」

「そっか。()らしてあげようか?」

「いや、雪が下に()ちると下の人が大変(たいへん)だからな。我慢(がまん)するわい」

「そっか。そうだね」



「ふっ、ふ、ふーん♪」
 そこに、この(あいだ)の女の子がご機嫌(きげん)にパパと歩いてきました。

「おっ、せいこちゃんじゃ」
 木の妖精は、うれしそうに言いました。

「ブナの木さん。クリスマスツリー作るから、少し木を分けてね」
「うんうん、お(やす)御用(ごよう)じゃ、もってけ」

「ヨイショ、ヨイショ。パパこのくらいでいいかなー?」
「うん、十分(じゅうぶん)だよ。じゃあせいこ、お(うち)で作ろう」

「ブナの木さん。ありがとう、メリークリスマス」
 そう言って、せいこちゃんはブナの木に(やさ)しく()れました。

「メリークリスマスじゃ、せいこちゃん」


「へえ……、ブナの木でクリスマスツリー作れるんだね」

「ほらっ、ぽー君。こないだのお(れい)じゃ。持ってくがええ」
 木の妖精(ようせい)は、おばけが持てる不思議(ふしぎ)木片(もくへん)を、ぽーに(わた)しました。

「わあ、ありがとう♪」
 
     
 その日の(ばん)、ぽーの家では……
 
「ほらっ、ぽー。これでどうじゃ?」
 ハルじいさんが、木の妖精(ようせい)からもらった木片(もくへん)で作ったクリスマスツリーをぽーに見せました。

「わぁ、すごい。キラキラしてきれいだね」


「さて、ぽーや。そろそろ()なさい。ぽーが()るのを、サンタさんが家の前で()ってるよ」

「うん、そうだね。サンタさん外でまたせちゃ風邪(かぜ)ひいちゃうね。じゃあお(やす)み、じいちゃん」

「うんうん。お(やす)み、ぽー」


 ぐぅ ぐぅ

 すや すや



 翌朝(よくあさ)……


「ホロ、ホロ、ホロッポー」


「ん……? なんだろう」


「ホロッポ―」


 ぽーは、何かの()き声で目を()ましました。

「おはよう、ぽー」

 朝日(あさひ)がまぶしくて、最初(さいしょ)はよく見えませんでしたが、ハルじいさんが持っているのは、(はね)のついた(しろ)動物(どうぶつ)でした。


「あっ!」

「ハトだ。白いハトだ! ねえ、じいちゃんどうしたの?」
 ぽーが興奮(こうふん)しながらたずねました。

「サンタさんが、持ってきたのじゃ」

「え……っ。でも、ボクはまだえらくなってないよ」
 ぽーがそう言うと、ハルじいさんは得意(とくい)げな(かお)をして言いました。

「ふふふ、ワシじゃ」

「えっ! じいちゃんが、えらくなったの? しゅっせだ、すごーい!」
「いやいや、冗談(じょうだん)じゃ。長老(ちょうろう)さんに(たの)んだら、許可(きょか)してくれたんじゃよ」

(……(じつ)は、長老(ちょうろう)将棋(しょうぎ)勝負(しょうぶ)をして、()ったら白いハトをあげるよって約束(やくそく)をしたら、ハルじいさんが()ってしまったんです)

「じゃあ長老(ちょうろう)さんが、サンタさんに持って行くように言ってくれたの?」

「ま、まぁ。そっ、そう言うことかの……」

 とにかく、ぽーは大喜(おおよろこ)びです。さっそく、ハトの家を(つく)(はじ)めました。

「そうじゃ、はやと君のとこに、クリスマスツリーを持って行っておくれ。……それと今日(きょう)のクリスマスパーティのことも言ってくるんじゃぞ」

「分かった、おじいちゃん。じゃあ、はやと君ちに行ってくるね」




 そして、今日(きょう)はおばけの世界(せかい)のクリスマスパーティが長老(ちょうろう)の家で(ひら)かれました。おばけの子供(こども)たちが、一年(いちねん)一番(いちばん)(たの)しみにしている日です。


「ぽー君、あっちで雪だるまを作ろうよ」

「うん、いいよ。はやと君、行こう」

「これこれ、まだケーキが残っとるぞ。()()わってからにしなさい」

「はぁい♪」 

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