第23話 ふうせん(※悲しいお話です)

文字数 1,162文字

 ある日、ぽーが空を飛んでいると、ぽーと同じ(くらい)(とし)のおばけの男の子が、空から下を(なが)めていました。

「ん? どうしたんだろう」
 
 ぽーは、おばけの男の子に(ちか)づいて「どうしたの?」とたずねました。

「……」

 おばけの男の子は、(だま)ったまま(さび)しそうに下を見ています。

「ボクは、ぽーって言うんだ」


「……はやと」

「はやと君か」


 ぽーも、はやと君と(なら)んで下を見てみると、青色の屋根(やね)の家の(まど)から女の人が見えていました。

 その人は、とても(かな)しそうにうずくまっています。

「ママ……」


(あ……っ、あの女の人は、はやと君のママなのか。……でもママは、ボクたちの仲間(なかま)じゃないんだ)


 そして、部屋(へや)の中には、たくさんの風船(ふうせん)()かんでいました。

「ボクは、風船(ふうせん)大好(だいす)きだったんだ」

「そうなんだね」

「ママが、元気(げんき)になってくれないと、ボク……雲の上に行けないよ」

「そっか……。うん、そうだね」

 ぽーは、(なに)か良い方法(ほうほう)がないかと(かんが)えました。


「ねえ、ぽー君。何か、ママに気づいてもらえる方法(ほうほう)ないかな?」


「そうだねぇ……」

「――あっ! そうだ」


 すると、ぽーは、はやと君の家の(まど)まで行き、はやと君を()びました。

「ねえ、ねえ、はやと君。こっち来てよ」
 
 そして、一緒(いっしょ)に家の中へと入っていきます。


 そして、ぽーは、部屋(へや)の中の風船(ふうせん)を、ママの(もと)(すこ)しずつ(ちか)づけていきました。


 ポン、ポン、ポーン♪


「えっ! ぽー君、風船(ふうせん)をさわれるの? すごいね!」

 うずくまっていた、はやと君のママは、いくつもの風船(ふうせん)自分(じぶん)(からだ)(やさ)しく()れていることに気づきました。

 ポン、ポン、ポーン♪


「なに? どうしたの? これは……」


 ママのすぐ(となり)で、はやと君はゆっくりと(はな)しかけます。

「ママ……、元気(げんき)出して。ボクは、これからもずっとママのそばにいるよ」

 ポン、ポン、ポーン♪


 はやと君の声は、ママには聞こえませんが、()かんでいる風船(ふうせん)(やさ)しく(からだ)()れる感触(かんしょく)が、ママには、はやと君と会話(かいわ)をしているかのように(おも)えました。


「ん? はやと? はやと……いるの?」


 はやと君のママは、まわりを見ながらはやと君を(さが)しています。


 ポン、ポン、ポーン♪


「そう……。これからもずっとママのそばにいてくれるのね。うん、()かったわ、ママもまけない! ママがんばるね」

「良かった♪ ママがんばってくれるって」
 はやと君はホッとしています。

「よかったね、はやと君」

 ぽーも、はやと君にニッコリと(わら)いました。



 すると、カローン♪、コローン♪という(やさ)しい(かね)の音が雲の上にある教会(きょうかい)から()(ひび)きました。


「ぽー君、この音はなに?」


「おやつの時間を(おし)えてくれる(かね)の音なんだ。一緒(いっしょ)におやつを食べようよ」

「うん、やったあ♪」



 そして、ぽーとはやと君は、一緒(いっしょ)仲良(なかよ)く空の上に飛んでいきました。

「はやと君、また一緒(いっしょ)にはやと君のママに会いに来ようね」

「うん♪」
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