第27話 小鳥のすみか

文字数 2,488文字

 この日、ぽーは大きな森の上を気分(きぶん)よく(うた)いながら飛んでいました。

「ある~日、森の中~、クマさんに~、であったあ」

「ふふふ~のふっふっふの~ふ~♪」 

 (うた)全部(ぜんぶ)(おぼ)えていないみたいです……。


「そういえば、クマさんの親子(おやこ)元気(げんき)にしてるのかな? きっと、あれだけドングリ()べたから、いまは、ぐっすりとねてるよね」



 ……すると、森の中にたくさんの大きな(くるま)が入っていきました。

 ガッ ガッ ガッ ガァッ

 ガッ ガッ ガッ ガァッ


「うわぁ、たくさんの車。木の妖精(ようせい)さんたち、大丈夫(だいじょうぶ)かな……」
 ぽーは心配(しんぱい)そうに見ていました。


 チュン、チュン

 チュン、チュン

 すると、鳥の()(ごえ)が聞こえてきました。

「ん? なんか鳥の声がするぞ。なんだろう……?」
 ぽーは、耳をすましました。

 チュン、チュン

「なんか……、ちょっと(かな)しそうな声だな」
 ぽーは気になって、声のする場所(ばしょ)へおりていきました。


「あ……っ、木の上に鳥がいる。子供(こども)の小鳥だ、かわいいなあ」

 すると、大きな木の(えだ)(つく)られた鳥の()に、ブルブルふるえている3()の小さな小鳥とお母さん鳥がいました。

 チュン、チュン……

「ん……? なにを言ってるのか分かるぞ」

「ねえ、ママ。どんどん まわりの木がなくなっていくよ」
(こま)ったわね。()移動(いどう)しても移動(いどう)しても、すぐに木がなくなっちゃう」

「こわいよぉ、ママ」

「どうしたら いいんだろう……」
 お母さん鳥は、とても(こま)っている様子(ようす)です。

 すると、大きな(くるま)が小鳥たちの木の(ちか)くまでやってきて、大きなハサミのような機械(きかい)(まわ)りの木を()り始めました。


 ガッ ガッ ガッ ガァッ

 ウイン、ウイーーーン


「えーん。こわいよ、(たす)けて!」
「ママー、おっこちちゃうよー」


「どうしたらいいんだろう? あんな大きな(くるま)にこないだのようなドングリ攻撃(こうげき)できないしなあ……」
 ぽーが心配(しんぱい)そうに森の上から見ていると、大きな(くるま)はどんどん森の木を(たお)していきます。


「これは、小鳥の()をもっと森の(おく)(うつ)さないとダメだよな」

 そう言って、ぽーは森の(おく)を見にいくことにしました。



 ……しばらく小鳥たちの()(つく)場所(ばしょ)をぽーが(さが)して飛んでいると
「おや? おばけのぼうや、どうしたんだい?」 
 少し(さき)の方から、声が聞こえてきました。

「あ……っ、木の妖精(ようせい)さんだ」
「おお、よく()かったねえ」
「うん、ボクには木の妖精(ようせい)さんの友達(ともだち)がいるんだ」
「ほお、それはめずらしい。ちょっと、(はなし)を聞かせておくれ」


 ぽーは、木の妖精(ようせい)にブナの木の妖精(ようせい)(はなし)を聞かせてあげました。

「ほお、そんなことが……。それは、仲間(なかま)世話(せわ)になったね。それで、今日(きょう)はどうしたんだい?」


 ぽーは、森が小さくなって小鳥が(こま)っていることを、木の妖精(ようせい)(つた)えました。

「ふむ。また人間(にんげん)たちは森の木を()ってるのか、けしからん!」
「うん。かわいそうなの……、小鳥さんたち」
「よし、わしに()めばよい。わしは、この(あた)りでは『神木(しんぼく)』って()ばれてるんだ。だから、誰もわしを()れん」

「すごーい!」

「今から()(つく)っといてやるから、ここまでつれて来なさい」
「え……っ、いいの?」
仲間(なかま)(たす)けてくれた、お(れい)だよ」
「やったぁ、ありがとう」



 そうして、ぽーは小鳥のいる場所(ばしょ)まで(もど)ってきました。

 ウイーーン、ウイーーン

「えーん、こわいよ。(たす)けてぇ」
子供(こども)たちを、(たす)けてください」

「おーい、小鳥さんたち」

 ぽーは、木の上にいる小鳥たちに()びかけました。

「ん……? ママ。だれかよんでるよ」
「え……っ、どこ?」
 お母さん鳥には、ぽーの声は聞こえないようです。

「ボクは、おばけのぽーっていうんだ。今から、キミたちはボクが(はこ)ぶね。キミたちのママには、ついてくるように言ってね」

「え……っ? う、うん、()かった!」

「ねえ、ママ。おばけのぽーさんが、ボクたちを(はこ)んでくれるから、ついてきてって言ってるよ」
「ん……? どういうことかしら?」


 ――すると、小鳥たちの木が、今にも(たお)れそうに大きく(かたむ)きました。

「うわぁ、あぶない! じゃあ、行くよ」
「うん、ぽーさん、おねがいします!」
 お母さん鳥が、(いそ)いで準備(じゅんび)をしながら言いました。

 そして、ぽーは小さい小鳥たちを(かか)えて空に飛びたちます。
 お母さん鳥は不思議(ふしぎ)に思いましたが、()んでいた木が(たお)れていくのを見てホッとしました。


 そうして、森の(おく)まで(すす)んでいくと、大きなヤマザクラの木が見えてきました。

「ほら、ぽーや。上のほうに()(つく)っといたから、そこに鳥の子供(こども)たちを()きなさい」

 ヤマザクラの木の妖精(ようせい)が、(えだ)()らして歓迎(かんげい)しています。

「うん、ありがとう」

 ぽーは、子供(こども)の小鳥たちを()の上にゆっくりと()きました。

「うわぁ、ふかふかだあ。気もちいい♪」
「わーい」
「やった、やったぁ」
 子供(こども)の小鳥たちは大喜(おおよろこ)びです。

 そして、お母さん鳥もやってきました。

「……こんなに、(しず)かで(うつく)しい場所(ばしょ)があるなんて」
「ここで、ゆっくり子供(こども)たちを(そだ)てなさい。人間(にんげん)もここまでは来ないからね」
「ありがとうございます。……あなたは?」
「わしは、このヤマザクラの木の妖精(ようせい)だ」
「ヤマザクラの木の妖精(ようせい)さん、どうもありがとうございます」
「いやいや、お(れい)はここにいるぽーに言ってくれ」
「ぽーさん、本当(ほんとう)にありがとうございました」
「よかったね」
 ぽーは、ニッコリ(わら)っています。

「ぽーにいちゃん、ありがとう」
「ありがとう、ぽーにいちゃん」
「飛べるようになったら、(あそ)んでね」
 子供(こども)の小鳥たちの、うれしそうな()(ごえ)が聞こえてきます。
 
 チュン チュン チュン♪


 すると、森の(おく)()む鳥たちも、(あたら)しい仲間(なかま)歓迎(かんげい)して()(はじ)めました。

 キュルッ キュルッ キュルッ♪

 チュン チュン♪

 ジューイッ、ジューイッ、

 ジュン、ジュン♪

「よかったね。みんな歓迎(かんげい)してくれてるよ」
 


 そこへ……

 カラーン♪、コローン♪

 (かね)の音が雲の上にある教会(きょうかい)から()(はじ)め、鳥たちの()(ごえ)()わさって、まるで森の音楽会(おんがくかい)のようです。


「うわぁ……。森が(おど)ってるよ」


 鳥の()(ごえ)(かね)の音に()わせて、森のたくさんの木が、(えだ)(たの)しそうに()らしました。


「あっははは、わーい、わーい」


 ぽーは、森の中を小鳥たちと飛び回りました。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み