第12話 お姫様がんばって!
文字数 1,639文字
今日も太陽はニッコリよい天気です。
ぽーは、ご機嫌に歌を口ずさみながら、空を飛んでいました。
「ワポの実は、たいようの子~♪ 入道雲の畑でスクスクそだつ~♪」
……すると、一人の女の子が下を見ながらトボトボと歩いていました。
「どうしたんだろう? げんきがないな、あの子」
ぽーは、女の子の場所までおりていきます。
「はぁ……、しっぱいしたらどうしよう」
女の子が、ポツリとつぶやきました。
「しっぱい? なにかするのかな?」
女の子は学校に入っていきました。
「おはよう、ほなみちゃん。今日はがんばってね」
女の子は、教室に入るとみんなから声をかけられています。
「う、……うん」
「ほなみちゃんって言うんだね、この女の子。なんか今日、がんばらなくちゃいけないんだ」
キーン、コーン、カーン、コーン♪
学校の鐘の音がなって、先生が教室に入ってきました。
「今日は文化祭です。3組は、白雪姫の演劇をする日です。今まで、たくさん練習してきたから、みんながんばりましょうね」
「はーい」
みんなが、元気に返事をしている中で、ほなみちゃんだけは、うつむいたままです。
「そうか。ほなみちゃんは、きんちょうしてるんだな」
少し大人になったぽーは、緊張という意味が分かりました。
「じゃあ、演劇に出る子は着替えて、体育館のステージの裏に集まってね。ステージの準備をする子は、先生と先に行きます」
「はーい」
ほなみちゃんは、お姫様のかわいいドレスに着替えると、トボトボと体育館に歩いていきました。
……そして、準備が終わると、いよいよ演劇が始まります。
ほなみちゃんは、ステージの後ろで、最後の練習をしていました。
「ほなみちゃん、じゃあボクがここまで話したら、次ね」
進行をする男の子から言われて、ほなみちゃんはコクリとうなづきました。
「小人さんたち、どうか私を助けてください。なんでも手伝いますから……」
「そうそう、それで猟師のけんたが……」
「ほなみちゃん、がんばれ」
ぽーは、ほなみちゃんの隣で応援しています。
そして、いよいよです。
「……では、白雪姫始まります」
パチパチパチ
パチパチパチ
今日は、学校の友達や校長先生など、たくさんの人が観ています。
……そして、王妃をする女の子の演技が始まり、いよいよほなみちゃんの出番です。
「ほなみちゃん、いけいけー」
王妃から白雪姫を殺すように命じられた猟師は、かわいそうに思い白雪姫を逃がします。
そうして、白雪姫は森の奥で七人の小人と出会いました。
「なんだ……? この女の子は」
小人たちが、白雪姫のほなみちゃんに言いました。
「…………」
ざわざわ
「…………」
ざわざわざわ
「ほなみちゃん……?」
ほなみちゃんは、緊張のあまり、何を言うのか分からなくなっていました。
ぽーは、ほなみちゃんの後ろで心配そうに見ています。
「どうしよう……」
「あっ、そうだ! 」
ぽーは、何か思いつきました。
すると、ぽーは、触りたい! と強く思って、ほなみちゃんの右手を持ち上げて小人へむけました。
そして、ほなみちゃんの背中を、がんばって、と優しくトントンと叩いてあげました。
(あれ? どうして私、小人をさしてるんだろう……? そうだ! 小人だ!)
ほなみちゃんは、なんとか思いだしたようです。
「小人さんたち、どうか私を助けてください。なんでも手伝いますから」
それからは、ほなみちゃんはしっかりと白雪姫を演技しています。とっても楽しそうです。
……ところが、ぽーも演劇をやりたくなってしまい、『8人目』の小人として、演技を始めてしまいました。
「こらあ、このわるものの王妃! これいじょう姫をいじめたら、ゆるさないぞ」
とか、
「だめだよぉ、白雪姫。リンゴは食べちゃダメだよぉ。毒が入っているから、やめときなよぉ」
とか、勝手なことを言っています。
しかし、誰にもぽーの声は届いていないので大丈夫……。
すると、ぽーはリンゴを捨てようとしています。
こらこら……、だめだよ。ぽー
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