第18話 コロのさがしもの

文字数 2,006文字

 ぽーはこの日、コロの家に()かっていました。。

「コロは元気(げんき)にしてるかな。――あっ、コロだ」

 コロは、いつものように退屈(たいくつ)そうに寝転(ねころ)がっています。でも……、今日(きょう)のコロは、ちょっと様子(ようす)(へん)です。

「コロ、元気(げんき)かい?」

「くぅーん」
 コロは、(かな)しそうな声を出しています。

「おや……? どうしたの? 元気(げんき)ないね」

 コロは、あすかちゃんのパパが買ってくれた、シカのツノのような(かたち)をした木のおもちゃで、いつも(あそ)んでいました。
 それが昨日、近所(きんじょ)のノラ犬に()られてしまったんです。(つな)がれているコロは、ノラ犬が()っていってしまうのを、見ているしかありませんでした。

「そっかあ。それは、かわいそうだねえ」  
 木のおもちゃを()っていってしまったノラ犬を(さが)したいのですが、今日(きょう)は、あすかちゃんも家にいて、コロは出ていけないみたいです。

「よぉし! ボクがさがしてくるよ!」
「わん♪ わおーーん」
 コロはとてもうれしそうに、しっぽをフリフリしています。

「もつべきものは友だって? なんかむずかしいことばを()ってるね。でっ、どんな(かん)じの犬なの?」

「わん、わんわん」
「うんうん、小さくて、すばしっこそうな……、なるほど」

「わん、わん」
「しっぽは白いけど、全体(ぜんたい)は黒なんだね」

「わん」
「よし、()かったよ。ボクにまかせといて!」
 そして、ぽーはコロが(おし)えてくれたノラ犬の()かった方向(ほうこう)に飛んでいきました。

「おーい、ノラ犬くん出ておいで。おこらないからさ、コロのおもちゃをかえしておくれ」 


 ……しばらく飛んでいると、家の隙間(すきま)から小さな犬が出てきました。
「おや……、あの犬、小さいぞ」

 しかし、よく見るとしっぽは黒くて全体(ぜんたい)茶色(ちゃいろ)です。

「ちがうな、あの犬じゃない」


 結局(けっきょく)、この日はコロの(はな)していたノラ犬は見つかりませんでした。

「ごめんよ、コロ……。あすは、がんばるからさ」
「わんわん」
 コロは、気にしないで、と言っています。




 翌日(よくじつ)……、コロの家に行くと、ちょうど学校(がっこう)から(かえ)ってきたあすかちゃんがコロと(はなし)をしていました。

「コロ、元気(げんき)にしてた?」
「わん」
「あすかね、今日(きょう)学校(がっこう)で……」
「――あすか。今日(きょう)はピアノの先生(せんせい)のとこ行くんでしょ? 早く練習(れんしゅう)しなさい」
「はーい。じゃあね、コロ。あすか、まだうまくピアノひけないから、(すこ)練習(れんしゅう)しなくちゃ」
「わわん(がんばって)」


 こうして、ぽーは今日(きょう)も木のおもちゃを()っていったノラ犬を(さが)しにいきます。

「おーい、おもちゃを()っていったノラ犬ちゃん、どこにいるんだい?」


 ……しばらくして、ぽーは(くさ)がたくさん()えた小さなさびれた()()にやってきました。

「こんな場所(ばしょ)にいないよね……」
 ぽーが、()()を通りすぎようとすると、どこからか声が聞こえてきました。

「くぅーん、くぅーん」
 それは、小さな犬の()(ごえ)です。

「なんだろう?」

 ぽーは、(くさ)むらに入っていきました。
 すると、ママ犬に小さな子犬が3匹、ママ犬のお(ちち)()んでいます。

「くぅーん、くぅーん」

「子犬、かわいいなぁ」

 よく見ると、ママ犬は、黒くてしっぽだけが白い、やせた小さな犬でした。
 そして、そのそばには木のおもちゃ……。3匹の子犬たちは、お(ちち)()()わると、そのおもちゃで(たの)しそうに(あそ)んでいます。


「どうしようかな。これはとれないよね……」


 ぽーは、とりあえずコロの家に(もど)ることにしました。


「うん、そうなんだよ。こないだのノラ犬は、ママ犬なんだよ。子犬のおもちゃのためだったみたい……」
「わん、わわん」
「そうか、あすかちゃんはピアノの先生(せんせい)のとこに行ったんだね。じゃあ、一緒(いっしょ)に行ってみようか」


 そして、ぽーはコロの首輪(くびわ)のボタンをパチンとはずしました。そして、さきほどの()()()かいます。

 ()()につくと、ぽーとコロは草むらに入っていきました。

 すると、さっきの3匹の子犬たちが、木のおもちゃで(たの)しそうに(あそ)んでいるのを、ママ犬が(やさ)しいまなざしで見ていました。

 しかし、ママ犬はコロに気づくと、おどろいた様子(ようす)で子犬の前に立って()えました。その(うし)ろでは、子犬がかたまってブルブルふるえています。

 コロは、(やさ)しく「わんわん」と言うと、その場に(すわ)りました。


 ……ママ犬はコロの様子(ようす)をしばらく見ていましたが、安心(あんしん)した様子(ようす)でまた子犬たちを(あそ)ばせ(はじ)めました。


「わん」
 しばらく、子犬たちの様子(ようす)を見ていたコロは、ぽーに(かえ)ろうと言いました。

「わんわん」
 コロに、ママ犬が(うし)ろで何か言っています。「ありがとう」と、言っているのでしょう。


「うん、これでよかったね。コロは(やさ)しくてすごいね」
「わんわん」
「え……っ。へぇ、コロもむかしは、ノラ犬だったんだね。小さい子犬のときに、ママとはぐれて、あすかちゃんにひろわれたんだね」
「わんわん」
「そうなんだ。じゃあ、コロもぽーと(おな)じで、ママをさがしてるんだね」


 この時、ぽーとコロは、夕日(ゆうひ)()びたオレンジ色の(みち)を歩きながら、ママに会いたいな、と思っていました。
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