第32話 雲の上の教会 教会の倉庫には

文字数 1,029文字

 ぽーは、ハルじいさんに(たの)まれて教会の倉庫(そうこ)へと()かっています。

「今日の富士山(ふじさん)もきれいだなぁ」

 ぽーは、(ふだ)(うら)に書かれた地図を見ながら、富士山(ふじさん)の下に(ひろ)がる大きな森の中にあるおばけの教会の倉庫(そうこ)につきました。倉庫(そうこ)()(ぐち)では、三人のおばあさんおばけが(すわ)って楽しそうに話しています。

「……そうそう、あそこのみたらしだんごは甘くておいしいね」
「私には、少し甘すぎるわ」
「私は、草だんごかな」

「こんにちは。あの……」

「はいはい。いらっしゃい」

「これを……」
 ぽーは、ドキドキしながら、持ってきた(ふだ)を見せました。
「おや、かわいい(ぼう)や。お(ふだ)だね、それで何が()しいんだい?」

「ヒモをください」

「ヒモだね、ちょっと()っててね」
 おばあさんおばけの一人が、(おく)に入っていきました。

「ぼうや、おなまえは?」
 もう一人のおばあさんおばけが、ぽーにたずねました。
「ボクは、ぽー」

「え……っ! もういちど (おし)えてくれるかい」
 ぽーは、おばあさんおばけの声が大きくなったので、すこしビックリしました。
「うっ、うん、……ぽー」

「ああ、大きくなって……」
 すると、おばあさんおばけは突然(とつぜん)泣き出しました。
「あわわ……どうしよう。おばあちゃん、だいじょうぶ?」
 ぽーは、自分が泣かしたと思いアタフタしています。
「ああ、ごめんよ。ハルじいさんは元気(げんき)にしてるかい?」
「う、うん。げんきだよ」
「それはよかった。……ぽーや」
「うん」
「私は、あなたのおばあちゃんだよ。 昔、小さな時に()っこしてあげたけど、(おぼ)えてないわね」
「う……、うん。ごめんね、おばあちゃん」
「ううん、いいのよ。小夏(こなつ)ばあちゃんだよ。(おぼ)えといておくれ」
「うん、わかった!」
 小夏(こなつ)ばあさんは、うれしそうにうなずいています。
「……もう少しで、ここの当番(とうばん)()わるから、そしたら雲の上の家に(かえ)れるからね」
「うん、まってる。小夏(こなつ)ばあちゃんもがんばってね」


 すると、倉庫(そうこ)(おく)からおばあさんおばけがヒモを持ってきました。そして、小夏(こなつ)ばあさんに(わた)しました。
「ほらっ、このヒモをハルじいさんに持っていっておくれ。それと、これをどうぞ」
 小夏(こなつ)ばあさんは、ヒモとたくさんの菓子(かし)が入った(ふくろ)を、ぽーに(わた)しました。
「わーい♪ お菓子(かし)いっぱいだ」
 小夏(こなつ)ばあさんは、(よろこ)ぶぽーを見て、うれしそうにうなずいています。
「じゃあね、小夏(こなつ)ばあちゃん」
「気をつけて行くんだよ」


 こうして、ぽーは雲の上のおばけの教会へと飛んでいきます。

 ぽーの姿(すがた)を、小夏(こなつ)ばあさんは笑顔(えがお)見送(みおく)っていました。
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