創世記5章-9章 アダムの系図/ノアの物語

文字数 2,388文字

アダムの系図
アダムの次男アベルが殺され、長男カインが追放された結果、話はもう一度アダムにもどる。

創世記5章4節

アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。アダムは九百三十年生き、そして死んだ。

アダムには妻エバとの間に三男セトが生まれる。

カインの末裔であるヤバルは家畜を飼い天幕に住む者の先祖となり、ユバルは竪琴や笛を奏でる者の先祖となり、トバル・カインは青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。(創4:19)
カインの系図セトの系図には、なぜか似た名前が多いね。

洪水の直前の世代は、両方ともはレメクだ。

レメクから、あのノアが生まれるから、単なる偶然以上の何かがあるのかも?

信じられないけど、アダムは930歳まで生きたと書いてある!(創5:5)
アダムの系図は、神からの祝福を表しているのだ。

当時の人々にとって、長寿と多産が祝福の度合いを意味していた。

超長寿と子孫繁栄は、エデンの園から追放された後も、主なる神がずっと人間を祝福し続けていたことを示しているんですね。

イスラエルの民の先祖は、土地を持たない羊飼いだったから、系図を大事にした。

系図は、自分たちの存在証明だったのだ。

ノアの物語

地上に人の悪が増し、不法が満ちているのをご覧になって、主なる神はお心を痛められた。

創世記6章17節-18節

見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。

わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。

神は、セトの子孫ノア洪水の決定を教え、箱舟に入って生き延びることを命じた。

ノアは「神に従う無垢な人」「神と共に歩んだ」(創6:9)と記されている。
ユダヤ人画家、シャガールが「箱舟建造の命令を受けるノア」(1931年)を描いている。
6章で、主なる神は「すべて命あるものを二つずつ」(創6:19)共に連れて箱舟に入るよう、ノアに命じた。

7章に進むと、神は「清い動物を七つがいずつ、清くない動物を一つがいずつ」(創7:2)取りなさい、とノアに命じている。

アメリカの画家、エドワード・ヒックスの「ノアの箱舟」(1846年)を見てみよう。
動物たちが仲良く整列して、自ら進んで箱舟に乗船している!
たしかに、ノアとその家族だけですべての生きものを捕まえて、箱舟に乗せるのは無理があるね。
とうてい実現不可能な命令を、ノアがすべて実行できたこと自体、神の奇跡なんだね。
洪水の期間は、40日間(創7:17)続いたとも、150日間(創7:24)続いたとも記されている。
ノアの物語も、二つの伝承を並記しているのだ。
地上から水がひいたかどうかを確かめようとして、ノアは箱舟の窓を開き、鳩を放した。(創8:10)
鳩はオリーブの葉をくわえて、ノアのもとに戻って来た。(創8:11)
ノアは水が地上からひいたことを知った。(創8:11)
フランスの画家、ギュスターヴ・ドレが「箱舟から放たれた鳩」(1866年)を描いている。
洪水で「鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた」(創7:21)ことが、生々しく描かれている。
死を描くことで、希望の象徴である箱舟と鳩を強調しているんだね。
ノアは家族と共に外へ出て、すべての生きものたちも箱舟から出た。(創8:18-19)
ノアは神のために祭壇を築き、焼き尽くす献げ物をささげた。(創8:20)

主なる神は「宥めの香り」をかいで、「大地を呪うことは二度とすまい」(創8:21)と言われた。

創世記9章1節

神はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。

産めよ、増えよ、地に満ちよ。

神は、ノアとその息子たちだけでなく、後に続く子孫たちや、地上のすべての生き物と契約を立て、二度と洪水で地を滅ぼすことはない、と約束した。(創9:9-11)
主なる神は、永遠の契約のしるしに虹を置いた。
ナポリの画家、ドメニコ・モレリの「ノアは救済に感謝する」(1901年)を見てみよう。
ノアたちが焼き尽くす献げ物をささげ、天に契約の虹がかかり、背景には箱舟から出る動物たちも描かれているね。
シャガールの「ノアと虹」(1966年)も見てみよう。
画面中央に焼き尽くす献げ物をささげるノアたちがいて、画面右手前で寝ころぶノアが、後に続く子孫たちの夢を見ている構図かな。
シャガールは、神の契約が将来世代まで永遠に続くことを描いているんだね。
箱舟から出たノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。(創9:20)
ノアには3人の息子、セム、ハム、ヤフェトがいた。
あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。

ハムは父ノアの裸を見て、外にいた兄弟に告げ知らせた。

セムとヤフェトは父の裸を見ないように後ろ向きに歩いて行き、父を着物で覆った。
フランスの画家、ジェームズ・ティソが「ノアの泥酔」(1896年-1902年)を描いている。
創世記9章24節-25節

ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、こう言った。

「カナンは呪われよ

奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」

ここで言う「カナン」とは、ハムの息子を指す。
ええええ、なんでノアは「カナンはセムの奴隷となれ」(創9:26)なんて言ったんですか?
カナンの子孫はソドム、ゴモラを含む地域に広がり、多くの神々を信仰するようになる。
神と共に歩んだノアの信仰を受け継ぐのは、セムの子孫だけなんですね。
あ、セムの直系の子孫が、イスラエル民族の祖アブラハムです!
民族の由来を説明する物語は、その後のイスラエルの民との関係性を考慮した上で、読み解く必要があるのだ。
イスラエルの民がエジプト脱出後に、カナン人の領土を征服する未来を、ノアは予告したのかもしれませんね。

引用

新共同訳『旧約聖書』


参考

浅見定雄『旧約聖書に強くなる本』日本基督教団出版局、1987年

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