創世記13章 ロトとの別れ

文字数 2,340文字

まずは前回までのアブラムの旅をおさらいしよう!

アブラムは妻サライと甥ロトと共に、ファラオから与えられた物を携えたまま、エジプトを出た

アブラムたちは再びネゲブ地方へ戻り、さらにベテルへ向かって旅を続けた。

ベテルとアイとの間にある以前に祭壇を築いて礼拝した土地まで来た。

この土地にはカナン人とカナンの先住民であるペリジ人たちがすでに定住していた。

創世記13章6節-7節

その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼う者たちとの間に争いが起きた。

アブラムは「非常に多くの家畜や金銀」(創13:2)を持っていた。

一緒に旅してきたロトもまた「羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた」(創13:5)。

エジプトでのサライは苦難は、飢饉という貧しさのせいで起こった。

しかし、豊かさもまた問題を生じさせてしまうのか…。

おそらく水をめぐる争いが起こったのではないか。

創世記13章8節-9節

アブラムはロトに言った。

「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。あなたが右に行くなら、わたしは左へ行こう。」

争いを解決するために、アブラムは双方の世帯が別々に住むことを提案する。
ヘブライ語の「共に」(創13:1)は対等な関係を意味する。

アブラムとロトの間は従属関係ではなく、対等な関係であったのだ。

ロトは「ヨルダン川流域の低地一帯」(創13:10)を選んだ。

ヘブライ語で「ヨルダンの平地」とは、ガリラヤ湖から死海までの低地を指す。

創世記13章10節

ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。

ロトの選んだ低地帯は緑が多く、ソドムとゴモラの町が栄えていた。
ツォアルは、後にロトがソドムを脱出して、避難しようとした町だね。

創世記13章12節-13節

ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。

ここで、ソドムとゴモラの滅亡の物語(創18:16-19:29)へとつながる伏線がすでに張られている

ロトが緑豊かな低地帯を自分の判断で選んだことが、苦難の始まりだったのか…。

ヘブライ語ではロトが「自分で選んだ、自分のために選んだ」(創13:11)ことが強調されている。
地縁と血縁から離れて、信仰によって結ばれた新たな共同体を求めてアブラムと共に旅してきたロトは、こうして別れてしまった

創世記13章14節-16節

主は、ロトが分かれて行った後、アブラムに言われた。

「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。」

ロトが分かれて行った後、主なる神はアブラムに語りかけ、「あなたの子孫を大地の砂粒のように」数えきれないほど増やすと約束された。

ハランを出立する時にも、神は「あなたを大いなる国民」(創12:2)にするとアブラムに約束している。

シケムの町に入った時も、神は「あなたの子孫にこの土地を与える」(創12:7)と約束している。

ロトと別れた時、神はアブラムに三度目の約束をした。

当時の人々にとって、子孫が増えることこそが神からの祝福の証しだったのだ。

創世記13章18節

アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
アモリ人マムレ「エシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた」(創14:13)。
羊の群れを養うのに十分な良い土地は、農耕民や都市居住者によってすでに所有されていた。

だから、アブラムはその土地の所有者たちと契約を結び、羊を飼う許可を得なければならなかったわけですね。

ヘブライ語では、アブラムがマムレの「良き隣人として住んでいた」(創14:13)ことが読み取れる。

一方、エジプトでは、アブラムたちは「寄留者」(創12:10)として滞在していたため、きわめて弱い立場に置かれていたのだ。

アブラムはマムレたちの「寄留者」ではなく、より対等な「同盟者」だったんですね。

ここでは、エジプト滞在時のような不安と恐怖に脅かされることなく、アブラムたちは安心して暮らせたのでは…。

アブラムたちが最初に祭壇を築いたのは、シケムにある「樫の木」(創12:6)のところでした。
ヘブロンに着いてからも、なぜか「樫の木」(創14:13)のところに祭壇を築いてますね?
ヘブライ語で「樫の木」は「神」とも関連付けられる言葉なのだ。

そのため、アブラムは「樫の木」の傍らに祭壇を築いたのだろう。

アブラムがヘブロンで平和に暮らしていた頃、ロトが選んだ低地帯では戦争が起こっていた。

創世記14章13節

逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。

ソドムとゴモラは戦いに敗れ、王は逃げて、財産や食料がすべて奪い去られた。

ソドムに暮らしていたロトも捕虜されてしまった。

ええ、ロトはどうなっちゃうの!?

ロトが敵に連れ去られたことを知ったアブラムの行動は…?

引用

新共同訳『旧約聖書』


参考

『創世記1 ヘブライ語聖書対訳シリーズ』ミルトス・ヘブライ文化研究所編、2007年

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

考えるカエル

本を読むウサギ

歴史学に強いネコ

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色