創世記25章 アブラハムの死/イシュマエルの子孫

文字数 2,163文字

サラの死後、アブラハムは再び妻をめとった。
新しい妻の名はケトラ
ケトラは、アブラハムとの間にジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアを産んだ。
創世記25章3節-4節

ヨクシャンにはシェバとデダンが生まれた。デダンの子孫は、アシュル人、レトシム人、レウミム人であった。ミディアンの子孫は、エファ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアであった。これらは皆、ケトラの子孫であった。

のちに、エジプトから逃亡したモーセは、ミディアン人の祭司エトロの娘ツィポラと結婚する。(出エジプト3:1)
『出エジプト記』に登場するミディアン人たちのご先祖は、アブラハムとケトラの息子ミディアンだったんですね。
年老いたアブラハムは、全財産をイサクに譲った。
側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に東のケデム地方へ移住させ、イサクから遠ざけた
創世記25章7節-9節

アブラハムの生涯は百七十七年であった。アブラハムは長寿を全うして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。息子イサクとイシュマエルは、マクペラの洞穴に彼を葬った。

神を信じたアブラムは故郷を離れて、未知の世界へ旅立った。
「あなたの子孫にこの土地を与える」(創12:7)という神の約束が成就される前に、アブラハムは死んでしまった。
「あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう」(創15:13)と神は予告している。
アブラハムの子孫がカナンの土地を神から与えられるのは、はるか遠い未来。

少なくとも四百年後でなければ、「あなたの子孫にこの土地を与える」という神の約束は成就しないわけだよね…。

自分の目で確かめることがかなわない、遠い未来の出来事であっても、アブラハムは主なる神の言葉を信じていたんだ。
神が自分の子孫を苦しみから必ず救い出し、「あなたの子孫にこの土地を与える」という約束を果たしてくれる、と心から信じていたから、アブラハムは満ち足りて息を引き取ることができたんだね。
新約聖書の『ヘブライ人への手紙』では、アブラハムについてこのように語っている。

ヘブライ人への手紙11章13節

この人たちは皆、信仰を抱いて死にました。約束されたものを手にいれませんでしたが、はるかにそれを見て喜びの声をあげ、自分たちが地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に言い表したのです。

アブラハムは、再婚したケトラから六人もの息子が生まれ、サラの息子イサクとハガルの息子イシュマエルによって葬られた。
自分の子孫を大地の砂粒(創13:16)のように、満天の夜空の星々(創15:5)のように増やす、という神の約束がまさに成就されていることを実感しながら、息を引き取っただろうね。
サラが死んだときに、ヘト人ツォハルの子エフロンから買い取ったマクペラの洞穴に、アブラハムはイサクとイシュマエルによって葬られた。
マクペラの洞穴に、アブラハムは妻サラと共に埋葬された。
創世記25章11節

アブラハムが死んだ後、神は息子のイサクを祝福された。イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。

サラの女奴隷だったエジプト人のハガルが、アブラハムとの間に産んだ息子イシュマエルは、エジプト人の妻を迎えた。
創世記25章13節-16節

イシュマエルの息子たちの名前は、生まれた順に挙げれば、長男ネバヨト、次はケダル、アドベエル、ミブサム、ミシュマ、ドマ、マサ、ハダド、テマ、エトル、ナフィシュ、ケデマである。以上がイシュマエルの息子たちで、村落や宿営地に従って付けられた名前である。彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった。

イシュマエルの12人の息子たちが、それぞれ十二の部族の祖となった。
のちに、イサクの息子ヤコブの12人の息子たちが、イスラエル十二部族の祖となるよね。
この「12」という数字は、一つの「民族」を象徴しているのだ。
アブラハムの息子は、サラの産んだイサクも、ハガルの産んだイシュマエルも、どちらも一つの民族の始祖となったわけですね。
創世記25章17節-18節

イシュマエルの生涯は百二十七年であった。彼は息を引き取り、死んで先祖の列に加えられた。イシュマエルの子孫は、エジプトに近いシェルに接したハビラからアシュル方面に向かう道筋に沿って宿営し、互いに敵対しつつ生活していた。

旧約聖書の『イザヤ書』にこのような言葉がある。
イザヤ書51章1-2

あなたたちが切り出されてきた元の岩

掘り出された岩穴に目を注げ。

あなたたちの父アブラハム

あなたたちを産んだ母サラに目を注げ。

わたしはひとりであった彼を呼び

彼を祝福して子孫を増やした。

イサクの子孫も、イシュマエルの子孫も、元はアブラハムという大岩から切り出されたんだ。
神に選ばれたアブラハムは、王でも英雄的な将軍でもない、無名の一人の人間だった。
神は、まさに「滅びゆく一人のアラム人」(申命記26:5)であったアブラハムを呼び、祝福して子孫を増やしたのだ。
あなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める」(創12:2)という神の約束は、確かに成就したわけですね。

引用

新共同訳『旧約聖書』『新約聖書』


参考

『創世記1 ヘブライ語聖書対訳シリーズ』ミルトス・ヘブライ文化研究所編、2007年

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