創世記22章-23章 ナホルからの知らせ/サラの死

文字数 2,961文字

アブラハムにナホルから知らせが届いた。
創世記22章20節-24節

「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、それからケセド、ハゾ、ピルダシュ、イドラフ、ベトエルです。」ベトエルはリベカの父となった。ミルカはアブラハムの兄弟ナホルとの間にこれら八人の子供を産んだ。ナホルの側女で、レウマという女性もまた、テバ、ガハム、タハシュ、マアカを産んだ。

創世記11章を読み返してみよう!

テラにはアブラハム、ナホル、ハランという三人の息子がいた。

ハランには息子のロト、娘のミルカイスカが生まれた。

ハランは父テラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ

テラがカルデアのウルを旅立った時アブラハムとその妻サラ、亡きハランの息子ロトが同行した。
そう、テラの同行者には、次男ナホルとその妻ミルカは含まれていないのだ。

ナホルとミルカは故郷に残ったのかな…?

そのナホルから、妻ミルカが8人、側女レウマが4人、合計12人の子供が生まれたという知らせが届いたわけですね。

12は、イスラエル民族を象徴する数字なのだ。

ナホルの八男ベトエルの娘リベカが、のちにアブラハムの息子イサクと結婚する。
ここで、創世記24章のイサクとリベカの結婚につながる伏線が張られているんですね。
創世記23章1節-4節

サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。サラは、カナン地方のキルヤト・アルバ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。アブラハムは遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人々に頼んだ。

「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」

アブラハムは、胸を打ちたたいてサラの死を嘆いた
サラが死んだ時、息子イサクは約37歳だった。
このとき、アブラハムはヘト人の国に寄留していた。

アブラハムはサラを埋葬するために、土地の一部を分けてもらえるよう頼んだ。

ヘト人とは、ヒッタイト人のことである。
創世記23章5節-6節

ヘトの人々はアブラハムに答えた。

「どうか、御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」

この「ご主人様、旦那」という呼びかけは、主従関係以外でも使われる言葉だ。
ヘトの人々は、市民権のない一時滞在者にすぎないアブラハムに対して、とても丁寧に答えていますね。
ソドムの町のように旅行者や外国人を襲って殺す人々もいる中で、ヘトの人々はアブラハムの願いを聞き入れ、「最も良い墓地を選んでください」とまで言ってくれた!
創世記23章7節-9節

アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、頼んだ。

「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、あの方の畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」

このときエフロンは、町の門の広場でヘトの人々の間に座っていた。

エフロンは広場に集まるすべての人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。

創世記23章11節-13節

「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」

アブラハムは国の民の前で挨拶をし、国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。

「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」

当時、町の門の前では人々の集まりや裁判が行われていた。
アブラハムとエフロンは、門の広場に集まっている人々を証人として、土地の取引をしたわけですね。
ヘブライ語で「私があなたに与える」という表現を3回も繰り返しているのは、エフロンが気前の良さを誇示しているのだ。
創世記23章14節-18節

エフロンはアブラハムに答えた。

「どうか、御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シュケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」

アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々の聞いているところで言った値段、銀四百シュケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。こうして、マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち合いのもとに、アブラハムの所有となった。

1シュケルは11.5グラムなので、エフロンが請求した銀400シュケルは法外な値段なのだ。
エレミヤは同じ規模の土地を銀17シュケル(エレ32:9)で買い取っている。
エレミヤはいとこから畑を買い取っていますね。

アブラハムのような外国人の寄留者が土地を購入することは、法外な値段でも言い値で買わなければいけないほど、難しいことだったんだね。

アブラハムは一時滞在する寄留者という弱い立場だから、エフロンに値下げ交渉が出来なかったのかもしれない。
アブラハムはヘト人の町に永住するわけじゃない。

自分が立ち去った後に、サラの墓地が不当に奪われないように、門の広場に集まるすべての人々の見ている前で銀400シュケルを手渡したんだね。

創世記23章19節-20節

その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマムレの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。

フランスの画家、ギュスターヴ・ドレが「サラの埋葬」(1866年)を描いている。
アブラハムが買い取ったとされるマクペラの洞穴は、現在のパレスチナ自治区のヘブロンにある。
アブラハム、イサク、ヤコブの三組の夫婦が葬られたと伝えられ、立派な慰霊碑が建てられていますね。

今日では大勢のユダヤ教徒やイスラム教徒たちがマクペラの洞穴に参拝しているが、痛ましい事件の絶えない場所でもあるのだ。

1980年にファタハ(パレスチナ民族解放運動)のアブ・ジハード派のテロリストが、墓で祈っているユダヤ教徒に発砲し、手榴弾を投げつけ、6人が死亡、16人が重傷を負う事件が起こった。
1994年にはアメリカ生まれのユダヤ人医師バールーフ・ゴールドシュテインが、墓で祈っているイスラム教徒に機関銃を乱射して、29人を殺し、150人以上を負傷させた。
1994年の事件以降、マクペラの洞穴ではユダヤ教徒とイスラム教徒が同じ場所で礼拝しないよう、祈りの場所が完全に分けられている。

引用

新共同訳『旧約聖書』


参考

『創世記1 ヘブライ語聖書対訳シリーズ』ミルトス・ヘブライ文化研究所編、2007年

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