第36話 こらえきれない涙
文字数 923文字
瑠衣が、憮然として言った。
「そんな、証拠証拠って、刑事の取り調べじゃあるまいし」
だが、真鍋は動じない。
「疑いを晴らしたいなら、証拠が必要よ」
「そんのあるわけない!」
憤慨する瑠衣に、真鍋が言い放った。
「だったら私たちは、三丘さんが人の物を盗むかもしれない人だと認識するしかないのよ。
意地悪で言っているわけじゃないの。それが客観的な判断というものよ」
こんなこと、もう嫌だ。葉菜の両目から、こらえきれなくなった涙があふれ出る。
顔を覆って泣いていると、郁美が、そっと肩を抱いてくれた。
部屋に戻っても、葉菜の涙は止まらない。葉菜を庇ってくれた見海たちに申し訳ないのと同時に、昨日のことが学校中に知れわたっていて、多くの人に泥棒だと思われていることが悲しくてならない。
どうしてこんなことになってしまったのか。いったい自分が何をしたというのだ。
真鍋が言っていたように、転入してまだ半月も経っていないというのに、こちらが知らない人にまで白い目で見られることになるなんて!
瑠衣が言った。
「真鍋さん、ひどいよ。こうなったら、なんとか私たちの手で、葉菜ちゃんの濡れ衣を晴らそうよ」
一緒に部屋について来た郁美が言う。
「結城さんに寮に来てもらって、みんなの前で話してもらうっていうのはどうかなあ」
見海が聞く。
「葉菜ちゃんに忠告したこと?」
「それもだし、河合さんが、陰でクラスを牛耳っているっていうことも」
「話してくれるかなあ。それに、たとえ話してくれたとしても、それが証拠にはならないでしょう?」
「そうか……」
結局、なんの結論も出ないまま、夕食の時間になった。
みんなでカウンターに並ぶ。葉菜の番が来ると、榎戸が、泣き腫らした顔を見て、驚いたように言った。
「三丘さん、どうしたの?」
「あ……」
何も言えずに戸惑っていると、瑠衣が横から口を出した。
「ホームシックみたいです」
榎戸は、同情するように、うんうんとうなずきながらつぶやいた。
「そうなの。ちょっと環境に慣れて来て、ちょうどおうちが恋しくなる頃だものね」
郁美が言った。
「それで私たち、部屋でずっと慰めていたんです」
今日も、淳奈はまだ帰って来ない。
「そんな、証拠証拠って、刑事の取り調べじゃあるまいし」
だが、真鍋は動じない。
「疑いを晴らしたいなら、証拠が必要よ」
「そんのあるわけない!」
憤慨する瑠衣に、真鍋が言い放った。
「だったら私たちは、三丘さんが人の物を盗むかもしれない人だと認識するしかないのよ。
意地悪で言っているわけじゃないの。それが客観的な判断というものよ」
こんなこと、もう嫌だ。葉菜の両目から、こらえきれなくなった涙があふれ出る。
顔を覆って泣いていると、郁美が、そっと肩を抱いてくれた。
部屋に戻っても、葉菜の涙は止まらない。葉菜を庇ってくれた見海たちに申し訳ないのと同時に、昨日のことが学校中に知れわたっていて、多くの人に泥棒だと思われていることが悲しくてならない。
どうしてこんなことになってしまったのか。いったい自分が何をしたというのだ。
真鍋が言っていたように、転入してまだ半月も経っていないというのに、こちらが知らない人にまで白い目で見られることになるなんて!
瑠衣が言った。
「真鍋さん、ひどいよ。こうなったら、なんとか私たちの手で、葉菜ちゃんの濡れ衣を晴らそうよ」
一緒に部屋について来た郁美が言う。
「結城さんに寮に来てもらって、みんなの前で話してもらうっていうのはどうかなあ」
見海が聞く。
「葉菜ちゃんに忠告したこと?」
「それもだし、河合さんが、陰でクラスを牛耳っているっていうことも」
「話してくれるかなあ。それに、たとえ話してくれたとしても、それが証拠にはならないでしょう?」
「そうか……」
結局、なんの結論も出ないまま、夕食の時間になった。
みんなでカウンターに並ぶ。葉菜の番が来ると、榎戸が、泣き腫らした顔を見て、驚いたように言った。
「三丘さん、どうしたの?」
「あ……」
何も言えずに戸惑っていると、瑠衣が横から口を出した。
「ホームシックみたいです」
榎戸は、同情するように、うんうんとうなずきながらつぶやいた。
「そうなの。ちょっと環境に慣れて来て、ちょうどおうちが恋しくなる頃だものね」
郁美が言った。
「それで私たち、部屋でずっと慰めていたんです」
今日も、淳奈はまだ帰って来ない。