第19話 散歩
文字数 1,055文字
思い悩んでいたはずが、いつの間にか眠ってしまい、ふと気づくと、昼が近かった。一つ大きなため息をつき、ワンピースのしわを伸ばしながら、葉菜はベッドから降りる。
さすがに、今日の食堂は人もまばらだ。離れたテーブルに、二、三人。
カウンターに料理を取りにいくと、榎戸が言った。
「三丘さん、出かけないの?」
「はい……」
「何か予定は?」
「いえ、特には」
「そうなの……」
そして、少し考えるような顔をしてから、葉菜に微笑みかけた。
「それなら、この辺りを散歩してみたらどう? 少し歩いたところにコンビニならあるし、緑が豊かで景色はいいわよ」
榎戸は、入寮早々、どこにも行く当てのない葉菜を不憫に思って提案してくれたのだろう。そう思い、葉菜は笑顔を作って答えた。
「はい、そうしてみます」
昼食の後、葉菜は部屋に戻りながら考える。たしかに、ずっと部屋に一人でいても気持ちがふさぐだけだし、コンビニでおやつでも買って、寮の周りをぶらぶらしてみようか。
そういえば、この数日、寮と学校の往復だけで、まだ一度も敷地の外に出ていないのだ。
最初の日に、タクシーに乗って来た道路を少し戻ると、広い通りに出た。道路の向かい側を少し行ったところにコンビニが見える。
来るときは、不安と寂しさでいっぱいで、周りの景色を見る余裕などなかったのだ。
コンビニで、デザート代わりのソフトクリームを買って、外のベンチに腰かけて食べる。そして、周りを見回しながら、これからの予定について考える。
さて、どうしようか……。
ソフトクリームを食べ終わったので、コーンの部分を包んでいた紙のカップを、ベンチの横のゴミ箱に捨てて立ち上がった。
ついタクシーでやって来た方向に行きたくなるが、駅までは、とても歩いて行ける距離ではない。そもそも、駅に行ってもしかたがない。
それで葉菜は、あえて反対の方向に歩き出した。特に目的があるわけではなかったが。
しばらく歩いて行くと、山の方向に向かって続いている道路があった。少し登り坂になっているが、まだ山は遠く、緑の中に、ぽつりぽつりとかわいらしい家が建っているのが見える。
どうやら別荘地が広がっているらしい。葉菜は、ログハウスやロッジ風の家々を眺めながら、蛇行するアスファルトの道路を歩いて行く。
今はオフシーズンのせいか、人気はないが、雰囲気のある建物を眺めながら歩くのは楽しい。やがて別荘地が終わり、建物はなくなったが、道路は、さらにその先の森の中へと続いている。
さすがに、今日の食堂は人もまばらだ。離れたテーブルに、二、三人。
カウンターに料理を取りにいくと、榎戸が言った。
「三丘さん、出かけないの?」
「はい……」
「何か予定は?」
「いえ、特には」
「そうなの……」
そして、少し考えるような顔をしてから、葉菜に微笑みかけた。
「それなら、この辺りを散歩してみたらどう? 少し歩いたところにコンビニならあるし、緑が豊かで景色はいいわよ」
榎戸は、入寮早々、どこにも行く当てのない葉菜を不憫に思って提案してくれたのだろう。そう思い、葉菜は笑顔を作って答えた。
「はい、そうしてみます」
昼食の後、葉菜は部屋に戻りながら考える。たしかに、ずっと部屋に一人でいても気持ちがふさぐだけだし、コンビニでおやつでも買って、寮の周りをぶらぶらしてみようか。
そういえば、この数日、寮と学校の往復だけで、まだ一度も敷地の外に出ていないのだ。
最初の日に、タクシーに乗って来た道路を少し戻ると、広い通りに出た。道路の向かい側を少し行ったところにコンビニが見える。
来るときは、不安と寂しさでいっぱいで、周りの景色を見る余裕などなかったのだ。
コンビニで、デザート代わりのソフトクリームを買って、外のベンチに腰かけて食べる。そして、周りを見回しながら、これからの予定について考える。
さて、どうしようか……。
ソフトクリームを食べ終わったので、コーンの部分を包んでいた紙のカップを、ベンチの横のゴミ箱に捨てて立ち上がった。
ついタクシーでやって来た方向に行きたくなるが、駅までは、とても歩いて行ける距離ではない。そもそも、駅に行ってもしかたがない。
それで葉菜は、あえて反対の方向に歩き出した。特に目的があるわけではなかったが。
しばらく歩いて行くと、山の方向に向かって続いている道路があった。少し登り坂になっているが、まだ山は遠く、緑の中に、ぽつりぽつりとかわいらしい家が建っているのが見える。
どうやら別荘地が広がっているらしい。葉菜は、ログハウスやロッジ風の家々を眺めながら、蛇行するアスファルトの道路を歩いて行く。
今はオフシーズンのせいか、人気はないが、雰囲気のある建物を眺めながら歩くのは楽しい。やがて別荘地が終わり、建物はなくなったが、道路は、さらにその先の森の中へと続いている。