第4話 303号室

文字数 866文字

 榎戸が言った。
 
「さて、今日から暮らすお部屋に参りましょうか」

 ああ、ついに来た。葉菜はうなだれて、食堂を出る二人の後に続く。
 
 廊下の反対側に、階段が見えている。そちらに向かいながら、榎戸は説明する。
 
「二階と三階が生徒たちの居室になっていて、葉菜さんに入っていただくのは、三階の303号室です」

 姉が聞く。
 
「そのお部屋は……」

「はい、四人部屋です。今は三人で使っているので、そこに入っていただきます」

 うなずく姉の横で、葉菜は内心ぎょっとする。二人部屋でも嫌なのに、三人部屋どころか、なんと四人部屋とは。
 
 榎戸は、さらにぞっとすることを言った。
 
「今いるのは、三年生が一人、二年生が二人です」


 ああ、なんと全員上級生。絶望しながら階段を上り、二階に着いたところで、榎戸が、廊下の奥を指しながら言う。
 
「あちらがトイレ、向こうの突き当りがシャワールームで、洗濯機もあります。トイレもシャワールームも部屋ごとに交代でお掃除することになっているので、とても清潔ですよ」

 ということは、三階にトイレはない? それでは、トイレに行くたび、階段を上り下りしなくてはいけないのか。
 
 
 そして、ついに榎戸が、腕時計を見ながら言った。
 
「それじゃ、お部屋に参りましょうか。この時間なら、みんな学校から帰っているかしら」

 今は四時前で、もう授業は終わっていることだろう。緊張に、胸がドキドキし始める。
 
 
 
「榎戸です。どなたかいらっしゃる?」

 榎戸が、ドアをノックしながら声をかけると、ほどなくドアが開いた。顔をのぞかせたのは、ボブヘアに眼鏡の女の子だ。
 
「みなさんいらっしゃる?」

 榎戸の問いかけに、彼女が答える。
 
「秋川さんはまだ戻っていませんけど」

「そう」

 そして榎戸は、葉菜のほうを振り返りながら言う。
 
「こちら、話していた三丘さんよ」

 彼女がこちらを見て、目が合う。葉菜はぺこりと頭を下げた。
 
「こちらは三年生の」

 榎戸の言葉に続いて、彼女は、葉菜と姉を等分に見ながら言った。
 
「城山見海です。どうぞ」

 そして、ドアを大きく開く。
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