第43話 葉菜の雰囲気

文字数 1,021文字

「私、自分では全然そんなつもりはないんだけど、見た目のせいか、派手な性格だと思われることが多いんだよね。あと、男好きだとか。

 瑠衣は、そういう私のことを軽蔑しているようでいて、実は心の奥では嫉妬しているのかも、なんて思ったりして。それが嫉妬だとは、本人も気づいていないのかもしれないけど」
 
 
 言われてみれば、その通りかもしれない。そう思っていると、淳奈がこちらを見て言った。
 
「葉菜ちゃんも同じだよ」

「えっ?」

 淳奈は微笑む。
 
「葉菜ちゃんって、あどけなくて儚げな感じで、なんていうか、放っておけない妹みたいな感じ?」

「子供っぽいってことですか?」

 佑紀乃にも中学生だと思われたし。だが、淳奈は言った。
 
「うーん、そうじゃないとは言わないけど、頼りなげで気になって、つい『大丈夫?』って声をかけたくなっちゃうような」

「はあ……」

「あんまりピンと来てないみたいだけど、朽木先生も、多分そんな感じなんじゃないかな。人にもよるだろうけど、そういう葉菜ちゃんの雰囲気は、みんな感じていると思うよ。

 自分もみんなにそんなふうに思われたいけど、全然そういうタイプじゃないって自覚していて、それでも自分が一番じゃないと気が済まない人は、妬ましいと思うのかもね」
 
 つまり、それが河合だということか。
 
「でも、そんな理由で事件をでっち上げて葉菜ちゃんを犯人に仕立てたり、友達にまで嫌がらせをするなんて、いくらなんでもやり過ぎだよね。

 まともじゃないよ。まともじゃないからこそ、すごく不気味」

 そして、淳奈は言った。
 
「もしもまた何かされたときには、ちゃんと対策を考えたほうがいいよ。吉尾先生が駄目なら、誰か別の先生に相談するとか、葉菜ちゃん一人で駄目なら、私たちが一緒に言いに行ってもいいし」

 佑紀乃も、似たようなことを言っていた。だが、葉菜は思う。大ごとになれば、いずれ姉の姑となる人の耳に入ってしまうかもしれない。
 
 そうなれば、姉の立場も悪くなってしまうに違いない。それだけは、どうしても避けたいのだ。
 
 
 
 翌日も、淳奈は彼の絵のモデルをするために出かけて行ったが、葉菜は部屋で勉強することにした。授業でやったところを復習するのだ。
 
 ここのところ、それどころではなかったのだが、姉に心配をかけないためにも、しっかり勉強しなくてはいけない。新たなトラブルのもとにならないためにも、念のため、週末には、教科書とノート一式を寮に持ち帰ることにしている。
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