第39話 警告

文字数 999文字

 寮に戻り、郁美も一緒に葉菜たちの部屋に来た。話を聞いた瑠衣が言った。
 
「それは多分、警告だね」

「警告?」

「あの人たちの目的は、葉菜ちゃんを孤立させることでしょう? だから、仲良くしている郁美ちゃんに、同じ嫌がらせをしたんだよ。

 一緒にいるなら、あなたも同じ目に遭わせるよ、みたいな」
 
 見海が言った。
 
「つまり、郁美ちゃんのクラスにも、河合っていう子の手下がいるっていうわけか。なんだか恐ろしいね」

 それを聞いて、葉菜は、思わず両腕をさすった。ぞっとして鳥肌が立ったのだ。
 
 葉菜は、郁美に向かって言った。
 
「やっぱり、これからお昼は別々に食べよう。郁美ちゃんは、またまあちゃんたちと食べたほうがいいよ。

 それに、行き帰りも別々にしたほうがいいかも」
 
「でも」

 反論しようとした郁美に、瑠衣が言った。
 
「そのほうがいいよ。悔しいけど、やつらを刺激しないほうがいい」

 見海も言う。
 
「そうだね。寮の中までは手出し出来ないだろうから、ここで仲良くすればいいじゃない」

 表情を曇らせながらも、郁美はうなずいたのだったが。
 
 
 
 その日の夜、ベッドでスマートフォンの電源を入れると、すぐに着信の通知があった。いつもの姉からのメッセージかと思ったのだが、それは郁美からだった。
 
―― 瑞希も河合さんとつながっているみたい。

 瑞希とは、郁美のルームメイトの一人で、同じ一年生だが、郁美とは別のクラスで、たしかC組だっただろうか。いったいどういう……。
 
 文面を凝視しながら考えていると、さらにメッセージが来た。
 
―― 嫌な目に遭いたくなければ、寮でも葉菜ちゃんと親しくしないほうがいいって言われた。

 なんと……。愕然としながらも、すぐに返信する。
 
―― わかったよ。当分の間、話したり一緒に過ごしたりするのはやめよう。

―― ごめんね。

―― いいよ、気にしないで。

 これ以上、郁美に迷惑はかけられない。
 
 
 
 ここに来てから、二度目の週末がやって来た。
 
 あれ以来、郁美とは表立って話してはいないが、メッセージアプリでやりとりをしている。今はまた、郁美はまあちゃんたちのグループに戻っているが、ギクシャクしてしまい、元通りというわけにはいかないらしい。
 
 今まで、友達間でのトラブルをあまり経験したことがないらしい郁美は、かなり参っているようだ。自分のせいで郁美にまで辛い思いをさせてしまい、申し訳ないと思う。
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