第11話 シャワー

文字数 966文字

 ドアを開けてすぐのところには、脱衣所があって、その奥がシャワーブースだ。葉菜は、着ていたワンピースと下着を脱ぎ、裸になってシャワーブースに入る。
 
 ここに来てから、まだ数時間しか経っていないというのに、いろいろなことがあって、もう何日もいるような気すらする。今までずっと、ほとんど姉としか会話せずに暮らしていたが、この数時間だけで、何人と口を聞いたことか。
 
 女の子というのは、ずいぶんにぎやかなものだ。まぎれもなく自分も女の子である葉菜は、そんなことを思いながらシャワーのコックをひねる。
 
 手に持ったシャワーヘッドから、勢いよく流れ出るお湯が肌を伝う。葉菜は、自分の申し訳程度の胸の膨らみを見下ろしながら、淳奈の薄い下着に包まれた、たわわな胸と形のいい尻を思い出す。
 
 瑠衣は、彼女のことを淫乱などと言っていたっけ。たしかに、見た目はセクシーだけれど、話している感じでは、さっぱりした性格のように思えた。
 
 きっと淳奈は人気者なのだろう。さっき郁美も名前を上げていたし。
 
 
 
 シャワーを浴びて部屋に戻って来ると、見海は机に向かって勉強していて、瑠衣と淳奈は、それぞれベッドに横になってスマートフォンを見ていた。
 
 それで、髪を乾かした後、葉菜もベッドに入ってスマートフォンの電源を入れると、姉からメッセージが届いていた。
 
―― 夕ご飯はもう食べた? わからないことがあったらみなさんに聞いて、迷惑をかけないようにね。

   明日の朝は寝坊しないで、学校の先生にもちゃんとご挨拶してね。風邪を引かないように、温かくしておやすみなさい。
   
 
 お姉ちゃん……。読むなり、涙がこみ上げる。すぐに返信を打ち込む。
 
―― 夕ご飯は食べたよ。部屋の人はみんな親切。シャワールームで、ほかの部屋の一年生の人と会ったよ。同じクラスになれるといいねって言われた。

 どれも本当のことだ。みんな優しいし、ここに来てから、嫌な思いはしていない。
 
 それでも、とても不安だし、姉に会いたくてたまらない。だが、心配をかけてはいけないと思い、事実だけを書いて送信した。
 
 
 やがて消灯時間になった。いつもよりずっと早い時間だし、慣れない場所で、ちゃんと眠れるか心配だったのだが、姉のことや明日のことを考えているうちに、いつの間にかぐっすり眠ってしまった。
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