第7話 自己紹介

文字数 875文字

 食堂に入って行くと、すでに集まっている生徒たちの視線が集中し、葉菜はうつむきながら二人の後に続く。見海が言う。
 
「席は自由なんだけど、みんなだいたい決まっていて、私たちは、いつもここよ」

 見海が指したテーブルの横を通り過ぎながら、瑠衣が言う。
 
「あそこのカウンターに並んで料理をもらうの。それで、だいたいみんなが揃ったところで『いただきます』をするのよ」

「はい……」



 みんなが料理の載ったトレイを手に席に着いたところで、榎戸が、カウンターの向こうから出て来て言った。
 
「みなさんに、今日、新しく入った方を紹介します。三丘さん、立って」

 声をかけられ、葉菜は、椅子をガタガタさせながら、あわてて立ち上がる。
 
「みなさんに自己紹介をしてください」

「あっ、はい。ええと、三丘葉菜です。ええと……」

 二十人ほどの寮生たちが、顔を上げて葉菜を見ている。口ごもっていると、榎戸が助け舟を出してくれた。
 
「三丘さんは一年生で、家庭の事情で、転校とともに、ここに入ることになったのよね」

「はい……」

「慣れないことも多いと思うから、みなさんサポートしてあげてくださいね」

 榎戸が微笑みかけて来たので、葉菜はぺこりと頭を下げる。
 
「よろしくお願いします」

 パチパチと、まばらな拍手が起こった。
 
 
 
 料理は、それなりにおいしかったけれど、当然、食べ慣れた姉の味とは違っている。もう姉の料理も食べられないのだと思い、やっぱり葉菜は悲しい。
 
 
 部屋に戻りながら、見海が言う。
 
「シャワーは消灯時間までに済ませることになっているの。シャワーブースの数がそんなに多くないから、部屋ごとに、一人ずつ順番に使うことになっているのよ」

 瑠衣が続ける。
 
「順番は、見海さんが一番、私が二番、淳奈が三番ってことになっているけど、葉菜ちゃんは四番目でいい?」

「あ……はい」

 いきなり「葉菜ちゃん」と呼ばれたことに戸惑いながら、葉菜はうなずく。
 
「まあ、淳奈はホテルで浴びて来ることも多いから、実質三番目ね」

 葉菜がきょとんとしていると、見海が瑠衣に向かって言った。
 
「やめなさいったら」
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