第81話 いい知らせ

文字数 1,057文字

「でもやっぱり、佑紀乃さんや、寮の人たちといるほうがいいから」

「そうなの。葉菜ちゃん、寮でお友達が待っているから、まっすぐ帰るの?」

 葉菜は笑う。
 
「さっきのあれは、嘘です。みんな夕方にならないと帰って来ないと思います」

「それじゃ、どこかでお夕飯を食べて行きましょうか」

「はい!」



 佑紀乃に、何が食べたいかと聞かれたので、葉菜は、回転寿司のお店に行きたいと言った。お金の心配ならいらないと言われたけれど、ホテルで高級なフランス料理を食べたので、夕飯は、リラックス出来て、お腹いっぱいお寿司が食べられるところがよかった。
 
 姉と何度か行って、とてもおいしくて楽しかったのだ。佑紀乃は、まだ一度も行ったことがないと言うので、葉菜がシステムやメニューの説明をした。
 
 値段のわりにおいしく、サイドメニューもたくさんあるので、佑紀乃も気に入ってくれたようだった。食べながら、結婚式の感想や、最近の学校での生活や、そのほかにもいろいろなことを話して、楽しい時間を過ごした。
 
 
 
 葉菜にはめずらしく、門限ギリギリに寮に戻ると、先に戻っていた三人が笑顔で迎えてくれた。
 
「おかえり。結婚式はどうだった?」

「お姉さん美人だから、素敵だったでしょうね」

「葉菜ちゃんも結婚したくなったんじゃない?」


 ひとしきりしゃべった後、瑠衣がにやりと笑って言った。
 
「葉菜ちゃんに、いい知らせがあるよ」

「え、なんですか?」

 見海は、スマートフォンに何やら打ち込んでいる。その姿をじっと見ていると、見海も、スマートフォン置いてにやりと笑った。
 
「いい知らせって?」

 みんなを見回しながら問いかけるが、淳奈もにやにやしているばかりで、誰も何も言ってくれない。
 
 葉菜は困惑する。いったい何事?
 
 
 だが、すぐに部屋のドアがノックされた。瑠衣が、にやにや笑いのまま葉菜に言う。
 
「行っておいで」

「はあ……」

 言われるまま、立って行ってドアを開けると、待ちかねた顔があった。
 
「郁美ちゃん!」

「葉菜ちゃん!」

 二人は、どちらからともなく手を取り合う。
 
「戻っていたんだね」

 郁美は、息を弾ませて言う。

「うん、今日のお昼過ぎに。今日はお姉さんの結婚式だったんだってね。

 今、見海さんに葉菜ちゃんが帰って来たってメッセージをもらって、早く会いたくて階段を駆け上がって来たの」

 なるほど、見海は、葉菜が帰って来たことを郁美に知らせていたのだ。
 
「郁美ちゃん、私も会いたかったよ!」

 うれしくて、手を取り合ったまま、二人して、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。
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