第4章 神永未羅の場合 第36節 青い衛兵たち

文字数 1,098文字

岩山を下ったら、森になった。
その森を()け、さらに(けい)(こく)まで降りると、視界がパッと開けた。

少し(はな)れた所に、青い旗が風に()れてた。
旗の(もん)(しょう)は遠すぎて見えない。
(はた)竿(ざお)の下には青い男が立ってる。
青い服、青い(くつ)、そして青いヘルメット。
男だと分かったのは、上半身タンクトップ姿で、筋肉を見せつけてたからよ。この寒いのに。

未羅(みら)は(コンクリ構造物から持って来た)(そう)(がん)(きょう)を取り出して、じっくり周囲を観察した。
私に双眼鏡を(わた)しながら、未羅(みら)は言った。
未羅(みら)「まずいね。みんなも良く見ておきなよ。」
私も双眼鏡ごしに見た。
青旗に(えが)かれたエンブレムは、羽根の生えた大きな首だった。
青い男は「気を付け」のポーズのまま()(どう)だにしない。良く見ると、上向きにした()(どう)(しょう)(じゅう)を、右手で(つえ)みたいに()いてる。「()(つつ)」のポーズしてたんだ。

私「あの人、ハデ好きだね。何かのキャンペーン?」
未羅(みら)「わざと目立つ色を着て、『やれるもんなら、やってみろ』と、私たちを(ちょう)(はつ)してるのよ。ジッサイ、ヘタに手を出そうものなら、(かく)れてるお仲間からイヤと言うほど(はん)(げき)される。きっと無事じゃ済まないだろうね。そういうカラクリ。今度の相手はプロの軍人だ。説得してどうのと言う相手じゃない。」
「それで、どうするんだい?未羅(みら)司令官どの。」
と、ザ・クラッシュが双眼鏡から目を離しながら言った。
未羅(みら)()げる。どうにかスキを見つけて(とっ)()する。負けたくなければ、動き続けることよ。」

それから3日間、見つかりにくい所(そして(たい)(てい)は歩きにくい岩場や(がけ))ばっか選んで歩き回った。未羅(みら)司令官って、イヤらしいくらい用心深いから。でも、どの(わき)(みち)をたどっても、要所には必ず「青い衛兵」が立ってた。

未羅(みら)は、私、ニーナ、ザ・クラッシュを集めて、口を開いた。
未羅(みら)「もう気がついてると思うけど、安全に通れる道は、どうやら一つも無いよ。強行突破と言う手もあるけど、私はあなたたちの出血を見たくない。」
ニーナ「未羅(みら)、また(しょく)()(ほう)()するつもり?」
カチリと音を立てて、ニーナが(きゅう)(だん)モードに入った。
ザ・クラッシュ「逆よ。まだ手はある。未羅(みら)は、そう言いたいのよ。でも、ちょっと口にしづらい問題点もあるみたいね。そうなんでしょ?未羅(みら)ちゃん。」
ザ・クラッシュも、未羅(みら)の目をまっすぐ見ながら、そう言った。
私「そうだよ、未羅(みら)ちゃん。言っちゃいなよ。もう私たち、(たい)(てい)のことじゃビックリしなくなったからさぁ。」
未羅(みら)もさすがに、苦笑いして口を開いた。
未羅(みら)「道はある。おそらく、あそこだけは軍人さんたちも近寄らないと思う。でも、危険なルートなんだよ。」
私「どう危険なの?」
未羅(みら)「ワルシャワの()(どう)の下の、地下水道とでも言っておこうかな。」
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