第4章 神永未羅の場合 第77節 物には順序がある

文字数 1,054文字

翌日、私、ニーナ、ルスヴンの三人で、ドラキュラ地下城の大和さんを訪ねた。

私たちの話を聞いた大和さんは、目をつぶって少し考え、そして口を開いた。

大和「お話は良く分かりました。スジの通った話だと思います。私に出来ることなら、喜んでご協力します。ただし、女王陛下のご(しん)(さい)(OKすること)をちょうだいしてください。私の出番は、それからです。」

やっぱり、そうですか。それでもルスヴンは、ねばった。

ルスヴン「お願いします、大和さん。(しつ)()で、門番で、()(じゅう)(ちょう)で、祭司長の私が、ミイラとして(ねむ)っている(ぜん)(どう)(ほう)のためにお願いしているんです。アナタに言うのは筋ちがいだと分かっていますが、どうか、私たちを救うと思って、お(ちから)()えください。」

大和「お気持ちは分かりますが、あなたに主人があるように、私にもお()(しゅ)さま(クライアントのこと)と言うものがあるんです。家来が主君に反逆することはあっても、我々出入り業者がお施主さまの望まないことをすると言うのはあり得ないんですよ。たとえ天地が引っ()り返っても、あってはならないことなんです。」

とうとうルスヴンも(だま)っちゃった。それを見届けて、大和さんは口を開いた。

大和「みなさんは女王陛下に対して苦手意識を持っていらっしゃるようだ。確かに、あの方はとっつきが悪い。いつでも近寄り難い空気を出していらっしゃいます。でも、ああ見えて、人の話は良く聞いてくださるんです。『スジが通っている。こちらの得になる』と見たら、自分の気に食わないことでもイエスと言ってくださる。そういう方なんです。私も散々‥‥、いや、何でもありません。」

ははぁん。大和さんも、ずいぶん手を焼いたな、あの「女王陛下」に。

ルスヴンは少し考えた。「ふぅ」とため息をついて、口を開いた。

ルスヴン「それじゃあ、いきなりギョクを出すしかないですか。」

大和「ええ、『もし※※できたら』だの『もし※※すれば』と言った不確かな話をするよりも、女王陛下にとって、はるかに受け入れやすいでしょう。形式は出来るだけ(おごそ)かに、礼式通りにやった方がよろしいかと存じますよ。」

ルスヴン「(えっ)(けん)()ですか。」

大和「はい。ああいう(ふん)()()の中では、取り乱したり、()を張ったりと言うワケには参りませんからね。もちろん、両方にとって。こうやって、あらかじめ行動と意思決定の(せん)(たく)()(せば)めておいた方が、こういう難しいケースでは、かえってプラスに働くと思うんです。式典準備のお手が足りないなら、私どもの方から人をお貸ししますよ。気の利かない連中ばかりですが、何人、必要ですか?」
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