第4章 神永未羅の場合 第65節 黒塚のおばあちゃん

文字数 984文字

私とニーナはルスヴンの案内で、秘密の()け穴に入った。
入口のありかは、ルスヴンの(めい)()のため、ナイショにしておくわ。

予想はしてたけど、そのトンネルはジメジメしてて、そして人ひとりが、やっと通れる(せま)さだった。
水もたまり、ホコリだらけ虫だらけだったけど、文句を言ってる場合じゃなかった。
でも、30分くらいで、すぐ城の外に出てしまったの。

ニーナ「なんだ、もう終わりかよ。これで王様の体を守れるんか?」
ルスヴン「まだ、ここから先があるんですよ、ニーナさん。(だっ)(しゅつ)は、外に出てからが(かん)(じん)なんです。」

ルスヴンの言う通りだった。
案内してもらった脱出ルートは、これまた狭かったけど、岩かげや岡をうまく利用して、出来るだけ外から見えないよう工夫されてた。
ただし、(いし)(がき)()(どう)や階段は一ヶ所も無かった。
「これは自然道じゃない。(だれ)かが作った道だ」とバレちゃうと、敵に(ふう)()される(おそ)れがあるからなんだって。

キツい坂道を降りたら、石ころゴロゴロの()(わら)に入った。
遠くに(はい)(おく)が見える。

ルスヴン「実は、ここから先は私も行ったことが無いんです。『あの小屋に、この脱出ルートの見張り番が(じょう)(ちゅう)してるから、(くわ)しいことは、そいつに聞け』としか聞いてないんです。」
おや、失礼。廃屋じゃなかったんだ。人が住んでたんだ。

近付いてみると、その小屋は、古くはあるけど、よく手入れされてた。
庭に雑草は一本も生えてない。鏡のようにツルッツルだ。
庭の(しょう)(めん)(おく)に枝ぶりの良い、大きな松の木が一本、植えられてる。その横に若竹が二本か三本。
公道から家の(しき)()に入る取り付け道路には、人の背よりも低い松が、間を置いて三本、植えられてた。松は先に進むほど背が低く、これって、ワザとの遠近法?

そして小屋のすぐ前には、カラッポの犬小屋があった。
全体的に純和風だった。
あのゴシック・ドラキュラ城と()(ぎゃく)の世界に来てしまったカンジ。

ルスヴン「ごめんください。城から来ました。どなたか、おいでになりませんか!」
ルスヴンが声をかけると、(ひら)()(横スライドじゃなく、(ちょう)(つがい)のあるドア)をキイキイ言わせて、小屋の中から()(がら)なおばあちゃんが現れた。
「日本昔ばなしの、正直おばあちゃん」みたいな人が。
アレ、ちがう小説になっちゃうの? この展開。

「おや、(しん)()(じゅう)(ちょう)さんかいね。こんな(きたな)い所へ、よくぞ、お()しくださいました。」
ルスブン「あなたが見張り番だったんですか、(くろ)(づか)さん。」
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