第4章 神永未羅の場合 第64節 侍従長しか知らないこと

文字数 901文字

「B台帳」の()(さい)は大正元年(1912年)から始まってた。

当時のお金で毎年、百万円を、十八年連続で投資してる。
(るい)(けい)一千八百万円。
今のお金に直せば、百五十億円くらいかしら。

その後、(しょう)()(きょう)(こう)や戦争のせいで、資金力は、ずいぶん落ちたみたいだけど、未羅(みら)が女王になった昭和三十二年(1957年)から、出て行くお金が見る見る()えてる。
「年に七十万円」ぽっちから、十年で「年に五千万円」まで増やした。
ここ十年は、毎年、七千万円がコンスタントに投資されてる。

累計投資額は十一億円。
()(へい)()()の変動を考えれば、今のお金で二百億円を()えるって、ルスヴンは言ってた。
高層ビル一本分くらいかな。

ルスヴン「これは()()()(せつ)ですね。それしか考えられません。もしも地上で、これだけの長期間に(わた)って、これだけのお金を動かしたら、(だれ)にも知られないと言うことは不可能ですから。」
ニーナ「それは分かったけど、どこから入ればいいんだよ、その地下施設。城の下のトーチカから? それとも未羅(みら)(ぎょく)()のうしろ?」

ルスヴンは急に(だま)ってしまった。
そして、私とニーナの顔をジッと見た。
この(しん)()にしては、(めずら)しい態度だ。

やがてルスヴンは、何かを決意したように口を開いた。
ルスヴン「実は、この城には()(じゅう)(ちょう)しか知らない()け穴があるのです。王の体を守るためです。」
ニーナ「侍従長しか知らない秘密を、どうしてアンタが知ってんのさ?」
ニーナ、「アンタ」呼ばわりは止めなよ。

ルスヴンは、気にする様子も無く続けた。
ルスヴン「簡単なことです。私は今、(しつ)()(けん)、門番(けん)、侍従長なんです。(けん)(しょく)は他にもありますが。」
ギョッとした。

私「ルスヴンさん。そんな大事な国家機密を、どうして私たちにバラしちゃうの? これ、(はん)(ぎゃく)(こう)()にならない?」
ルスヴン「なります。その積もりで言っています。」
私もニーナも、さすがに(ちん)(もく)した。

とりあえず、私が口を開いた。
私「ニーナ。ルスヴンさんを『アンタ』呼ばわりしたの、謝りなさいよ。」
ニーナ「ルスヴンさん。ごめん。」

私が引き取った。
私「反逆行為にならないよう、私たちで(がん)()ろうよ。未羅(みら)のためにも、私たちのためにも、そして東方ドラキュラ全体のためにもなるようにさ。」
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