第4章 神永未羅の場合 第54節 殺してもいいサバイバル・ゲーム

文字数 952文字

レイが提案して来たのは対面戦じゃなく、「(てっ)(ぽう)は使わないけど、死ぬこともあるサバイバル・ゲーム」みたいな物だった。

このドラキュラ山の、どこに(じん)()ってもいい。
(せん)(とう)(けい)(ぞく)の意志がある限り、どこまで移動してもいい。
火薬を使う武器以外は、何を使ってもいい。もちろん()(りょく)でも(ちょう)(のう)(りょく)でも可。
制限時間なし。
(こう)(ふく)(ふく)めて、相手を無力化するまで終わらない。
開戦は、明日の()()と決まった。

その前の晩、()き火を囲みながら、ザ・クラッシュは私の顔を見ず、こう言った。
ザ・クラッシュ「明日は私一人で片を付けるよ。武子(たけこ)は下がってていい。きゅんきゅんしてる男相手に、本気の球は投げられないだろ。」
返す言葉がなかった。

翌朝、()()を待って、私とザ・クラッシュは動いた。
安全を確保してある「はずの」岩場で、私たちは(おそ)われた。
山の上から大きな(たま)(いし)が転がって来たの。
火山岩だった。
真っ赤に焼けて、まるで赤いイノシシみたいだった。

転がる岩で、私たちはペチャンコにされた。
(ゆう)(たい)の私は、すぐ復活出来たけど、ザ・クラッシュの体には、きれいな所なんて一つも残ってなかった。

特別な薬をザ・クラッシュの(はだ)に、すり()みながら、「この(かたき)は必ず取ってやる」と私は(ちか)った。
三日後、ザ・クラッシュは復活した。
薬の中身はトレード・シークレット、営業秘密なの。

また、ある日、私たちはレイを追い()めたけど、あと一歩のところで(どう)(くつ)()げ込まれてしまったの。
ザ・クラッシュ「さあ、行くよ。」
私「ちょっとぉ、ここは様子を見るトコだよ。」
ザ・クラッシュ「()け穴があったら、どうする? 早い者勝ちだ。なあに、対面戦なら負ける気がしない。」
私の手を()(はら)って、ザ・クラッシュは洞窟に(とつ)(にゅう)した。
「バチン!」と大きな音がした。
用心しながら洞窟に入ったら、太い木に割れ目を作り、(くさび)で止めただけの単純なトラップがあった。
その楔を外されて、ザ・クラッシュは割れ目の間にいた。紙より(うす)くなって。

自分の(せん)(とう)(のう)(りょく)に自信があり過ぎる人は、自分の中の用心深さを(だま)らせてしまう。(わき)に寄せてしまう。
だから、こんなことになる。

私の中で、(にく)しみがハッキリした形を取った。

それはそれとして、これじゃあ、切りがない。
今度はザ・クラッシュを、すぐには復活させないことにした。
こっちから、あそこに(むか)えに行った方が早いから。
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