第35話 バスツアー 2

文字数 1,028文字

惑星の大気圏内に入る。

よくSFで見た大気との摩擦で機体が高熱を発するような事はなかった。

知られている物理学的な突入角度とか突入速度がどうということもなかった。

眼下に広がるのは広大な緑地と無数の湖 それから浮遊大陸あるために立体的に見える地表。

浮遊大陸は皆揃って惑星の自転する方向に自転よりも少し早く移動している。

シンはシートの上で窓の外を見ながらうとうとしている。

ラドはシンの膝の上で窓の外をじっと見ている。

残念ながらこの2人だとシンはコミュ症でほとんど喋らないし、ラドは見ているだけなのでストーリーが展開しない。

今回のバスツアーの最初の目的は宇宙星域285、ネコの足星系 クツシタノアナ惑星の建国58,793回記念パレードを見ること。

地平線から反対側の地平線まで真っ直ぐ続く道路?

表面は素焼きのような多孔質のセラミックのようだ。
道路幅は自動車道で6車線ぐらい。

ここは少し広くて露店の様なものがいくつか出ている。

お土産屋さんのようだがどう見ても連合のヴァイ人が遊びでやっている様に見える。

「まだ、この辺までエデンの文化は知られていないみたいだからね。」

「やっぱり観光地にはお土産物屋さんが必須でしょう。」

大売り出しのはっぴを着たヴァイ人が熱烈歓迎の旗を持っている。

なんかいろいろ間違えている様な気がするけど、まあいいか。

お土産を見ると何故かシャケを咥えた熊の置き物だったり、キーホルダーや八ヶ岳とか書いたペナントなど。木刀なんかもある。

まあ、まともそうなのでは浮遊大陸せんべいとかクツシタノアナ饅頭など。

お店をやっている方がノリノリで楽しんでいるみたい。

そうしていると遠くから地響きが聞こえてくる。

道路の向こうからドドドドっと何かが迫ってくる。

「あぶないからぅ道路傍に出てぅ。」

と言う間もなく物凄い砂埃を巻き上げた何かの集団がゴーっと通り過ぎて行った。

みんな埃をかぶって真っ白けだ。

「なんだったの?今のは。」

アキが言う。

なんかすごいものを見たって顔をしてミルゥカさんが答える。

「パレードだよぅ。」

「ぜーんぜーんなーんにもわかんなかったわ。」

アーフが埃を落としながら解説してくれる。

「この星の統一戦争の時の精鋭の戦士達が徒歩で行軍した時のことを再現して英霊達を讃えるのがここのパレードよ。」

「すごーいぅ迫力だったでしょう。」

なんか違う気がするけどまあいいか。

「つぎーわぁ、チョコレート工場ね。」

お客さんよりもミルゥカさんのほうが、面白がっているみたいだけど。






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