第20話 サロン

文字数 962文字

「辺境の第87星区に昆虫みたいな外骨格の種族が住んでいる惑星があるんだって。」

「幼虫時代が7万年で蛹の時代が1万年、羽化してから5000年で寿命になるらしいね」

「それぐらい幼虫の時期が長いと外骨格の種族っていうよりプニョプニョのイモムシ種族じゃないのか?」

「いや、幼虫の時代は普通に僕たちと同じような人間みたいだよ。腕は4本あるけど。」

ピアノの発表会みたいなドレスやスーツを着た子供達が数人集まって話をしている。

いや、子供みたいな、かな?

スタジアムのような広さの大ホールにはたくさんのテーブルや椅子が配置されている。

ネオテニー(幼形成熟)化は全人類に施された。

見回すとほぼ10歳から13歳ぐらいで成長を止められている。

なんと連合はそれ以上の年齢だった人間も成長や老化を逆行させてしまった。

隣でワクワクしている様子のお父さんとお母さんも今はシンと同じ歳頃に見える。

だいたい2週間ぐらいで逆行していったから慣れちゃったけれど。

本人達はなんだかすごく楽しそうだ。

「だって2回も子供の頃を経験するのよ。素敵じゃない?」

子供は勉強しなさい。だとか子供のくせに。とかいうしばりがなくなっている今ならそうかもしれないけれどこれからずーっと子供だよ。

進化したてだし学校も会社も意味を失ったペコ人に向けて星間通商連合新規事業部開拓課は惑星ペコ開発事業団を設立してサロンの運営を開始した。

サロンはペコ人の過去の歴史の中で文化を興隆させたことがあるのでそれっぽいことをやってみることになった。

惑星ペコの存在意義は宇宙の中でも希少な文化と、その多様性にある。

いくら知性や技術が高度化しても文化を失っては意味がない。(面白い事がなくなってしまう。)

それなら進化させない方がいいのでは?と言う考えもあった。

でも、それだといずれ自滅してしまうか自衛能力を持つこともなく独立を維持出来ずに他の文明に蹂躙されてしまう可能性もある。

まあやっちゃったもんはしょうがないからフォローを考えようと言うのが本当のところだけど。

ピータンが子供達に混ざってお菓子を食べている。

シンがボーっと考えこんでいるのを見て何かを感じたのか、「いひひ。」と笑う。

ラドがシンの手を引いて色んなお菓子がのっているテーブルに行こうとする。

ラドもだんだん人間ぽくなって来ているような気がする。

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